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テーマ:心の病(7312)
カテゴリ:薬
モルヒネというと何を連想するでしょうか。古典的な麻薬、強力な鎮痛剤、どちらかと言えば鎮痛剤というイメージの方が強いのかもしれません。
モルヒネはアヘンを原料に作られます。19世紀のはじめにドイツの薬剤師、ゼルチュルナーによって分離され、ギリシャ神話の夢の神であるモルフェウスの名前にちなんでモルフィウムと名付けられています。 皮下注射が発明されるのが1853年の事なので、それまではあまりモルヒネを使ったという記録は残されていません。その後、広く使われるようになり、戦争で負傷した兵士の痛みを和らげる事に使われ、南北戦争だけでも40万人を超えると言われる中毒患者を生み出し、当時、軍人病と呼ばれています。 鎮痛剤を使用する際、弱い効き目の鎮痛剤からはじめて、徐々に用量を増やしていくという事が行なわれます。継続して使用する事で、やがて効き目が弱まり、量が増えていって副作用だけが目立ってくるという「頭打ち」と呼ばれる減少が起こります。 モルヒネにはその頭打ちが起こらないと言われ、効き目が強力というだけでなく、継続して使用できる鎮痛剤と言えます。また、最近行なわれている低用量の投与法では、心配される依存性も生じない事から、利用範囲が広まってきています。 かつては粉末をアルコールで溶かし、水で薄めて飲用するという使用法が行なわれ、継続性が低かった事から、痛みがひどい末期ガンの患者では一日に10回以上も服用する必要があり、効く代わりに不便な薬剤となっていましたが、効き目が長続きする錠剤が開発されてからは、それも解消され、一日2回程度の服用で痛みもコントロールができるようになっていると言います。 最近、そんなモルヒネを上回るかもしれない鎮痛剤が意外な物から見付かっています。前立腺ガンの診断に用いられている腫瘍マーカーの一種、前立腺酸性ホスファターゼに痛みを引き起こす伝達物質を痛みを抑える物質に変換する働きがある事が突き止められています。 痛みを抑える鎮痛効果は単回の投与でもモルヒネと同等かそれ以上とされ、モルヒネの単回投与での持続時間が5時間とされる事に対し、前立腺酸性ホスファターゼは最長で3日間とまで言われ、一回の投与でこれほどまでの効果を上げるとはと研究者を驚かせたと言います。 今後、同様の働きを持つ他のタンパク質の検討や、相互作用を持つ物質の研究を通し、錠剤化して使いやすくする事が進められているそうです。痛みの感じ方や痛みへの耐性には個人差が存在しますが、痛みを有効にコントロールできる事は患者の生活の質という点からは大幅な向上に繋がる事と言えます。新たな鎮痛剤の登場を歓迎したいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年10月31日 08時19分58秒
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