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カテゴリ:薬
ボツリヌス菌の名前は、熊本がとなりということで、他の食中毒菌よりちょっと特別な感じがしてしまいます。名物の辛子レンコンに混入し、大変な食中毒事件を引き起こした原因菌であった事は今でも記憶に残されています。
ボツリヌス菌が作り出す毒素、ボツリヌストキシンは非常に毒性が強く、かつては500gもあれば全人類を滅ぼす事ができると考えられていたため、生物化学兵器としての研究も行われていました。 実際にボツリヌストキシンの毒性は強力で、1gの殺傷力は100万人に相当すると言われ、青酸カリ1gの殺傷力が5人程度である事を考えると、その強力さが伺え、自然界に存在する毒素の中では最強であるともされます。 そんなボツリヌス菌が作り出すボツリヌストキシンですが、最近では意外な分野で活躍しています。美容整形の分野で皺を取る治療法として使われているボトックスは、ボツリヌストキシンを製剤化して利用しています。美容整形以外の分野でも瞼の痙攣の治療や多汗症、脳性麻痺による歩行障害の治療にも使われ、怖ろしい毒素としてではない一面を伺う事ができます。 ボトックスによる皺取りはすべての皺に対して有効というわけではなく、表情筋に由来した皺、笑い皺や額の皺に限られるとされます。そんな額の皺に対して新たなボツリヌス製剤が開発され、安全性、有効性が確認された事からボトックスに代わるものとして期待されています。 ボツリヌス菌毒素A型複合体のレロキシンと呼ばれる新たなボツリヌス製剤は、ボトックスよりもタンパク質の量が少ない事から、体内で分解される速度が遅く、効果が長く続くと考えられ、組織中で拡散する範囲がボトックスの3倍と広いので、注入回数が少なくて済むとされます。 広く長く効くという事で、額のような比較的広い部位では、患者の負担を軽減する事に役立つ事が可能ですが、目尻の皺のような狭い範囲では拡散しやすさが裏目に出て、ボトックスよりも副作用と言える瞼の下垂が多く見られてしまいます。そうした点を踏まえ、今後さらに研究を進めるべき部分は残されていますが、ボトックスの競合品となる事は確実なようにも思えます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年04月06日 08時05分15秒
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