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カテゴリ:薬
社会情勢の目まぐるしい変化に伴い、グリセリンが翻弄されています。かつては安定的に1kgが350円程度で企業間取引されていたものが、今では半値以下に下落して、それでも価格の下げ止まりがこないと言われています。
理由の一つは需要の低下にあり、以前は煙草の葉の保湿剤として大量に使用されていたものが、用途の見直しによって使用量が減少した事や喫煙人口が減ってきたのに伴い需要の落ち込みが見られています。 それ以上の理由としてバイオディーゼルの登場があります。巨大な菜種油の産地であるヨーロッパでは、生産量の半数がバイオディーゼルへ回され、盛んにバイオディーゼルの生産が行われています。 バイオディーゼルはアルコールを触媒としてエステル交換反応と呼ばれる化学反応を起こし、油脂から脂肪酸メチルエステルを切り離す形で製造されます。油脂から脂肪酸メチルエステルを切り離すと、副産物としてグリセリンができます。原料の油脂から切り離されるグリセリンの量は、全体の10%程度になると言われます。 グリセリンには植物油由来の植物グリセリンと石油由来の合成グリセリンがあり、植物グリセリンの方が安値で取引されています。合成グリセリンの方が高値になる理由は純度の高さにあるとされ、医薬品には合成グリセリンが使われています。 植物グリセリンには原料由来の油脂やグリセリンを得るために切り離したはずの脂肪酸が混じってしまう事や、含まれている油脂や脂肪酸を取り除くために蒸留する事でグリセリン自体が劣化する事があり、どうしても品質が低くなってしまいます。 グリセリンに不純物が含まれていると加熱したりアルカリ性にすると、脂肪酸が変色してそれまで無色透明だった物に色が付いてしまいます。医薬品は加熱殺菌が当たり前のように行われ、アルカリ性になる物もある事から不純物が含まれるグリセリンを使う事ができません。 逆に合成グリセリン、石油由来というとイメージが悪い事から、化粧品などには植物グリセリンが好んで使われます。私達が通常目にする薬局で売られているグリセリンも植物由来の物がほとんどで、手作り化粧品の材料として安価に購入する事ができます。 日ごろからあまり接点が無いように思われるグリセリンですが、保水性や吸湿性に優れている事から意外なほど多くの物に使われ、ラベルに記載されている原料表示を見ると身近な物である事が伺えます。社会情勢の変化によって翻弄される話はよく聞かされますが、意外な物まで影響を受けているものだと思わされてしまいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年04月28日 07時48分47秒
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