カテゴリ:不思議体験
どこの大学の囲碁部にも、奇人変人と言われる人がいるものだが、S先輩ほどの人はおそらく、全国を探してもまずいないであろう。とびきりの奇人であった。碁も強く、大学の大会で上位入賞暦があり、高校時代からよく教えてもらった。
文字通り、仙人のような生活をしておられた。玄米を主食にして、他に近所で雑草を取ってそれを食べていたらしい。大学囲碁大会のレセプションに参加した時も、会場で出された食事には一切手をつけず、自分で用意した玄米と雑草を食べていて、周囲の度肝を抜いたそうだ。Sさんに食事に招待された人の話では、雑草のてんぷらばかりが出てきたそうだ。私も一度、自宅に招待された事があるが、びっくりした。木造の古びた納屋のような建物の中に妙な機械がたくさんおいてある。どこに生活空間があるのだろうと不思議だった。このときは、ベアリングという物に凝っていたようで、ベアリングの仕組みやうんちくについて、延々と何時間も聞かされたのだった。とにかく、凄まじい凝り性の人で、一度何かに凝り始めたらとことん極めようとする人だった。 Sさんと一緒にスキーに出かけたことがある。二人とも初心者だったが、Sさんはワールドカップを目指すとはりきっていた。私は、一緒に行ったコーチ役のTさんと一緒にすべっていたのだが、なぜかSさんの姿が見えない。どこだ、どこだと探しているうちに、リフトの上から見つけた。カニ歩きで、斜面の端っこを登っていたのだ。何をしているのかと聞いたところ、ワールドカップを目指すためには、足腰から鍛えないとだめなので、一切リフトは使わずにカニ歩きだけで上まで行ってから、滑るというのだ。この、心構えの違いに圧倒されてしまった。本当にワールドカップに出られるのではと思ったが、さすがに無理だったようだ。 その後、スケボーやローラースケートに凝っていたこともある。スケボーでは、スキーの時とは対照的に、いきなり山のてっぺんから車も通る道をすべり降りてきたらしい。曰く、こういうのは命がけじゃないと上手くならないそうだ。 さらに一輪車の達人になって公園で子供にショーを見せていたりしたようだが、その後の詳細は知らない。風の噂では、今も仙人らしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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