私の家族は約20年前からよくヨーロッパ旅行に出かけている。最後に出かけたのは4年前のことだが、その際に拠点としている町がベルギー、アントワープ(オランダ語圏であり、オランダ語ではアントウェルペン)だ。ルーベンスの肖像画や「フランダースの犬」、そしてダイヤモンドで有名なアントワープからオランダ、ドイツ、果てはスカンジナビア諸国、ポルトガルまで出かけたこともあり、いい思い出である。
そのベルギーが大変なことになっていた。
昨年6月に総選挙が行われたのだが、選挙後の各政党間の連立交渉は非常に難航した。その連立交渉がまとまり、今日にも新首相が国王から任命される。
ベルギー新首相任命 政治空白540日で幕(6日、東京新聞)
1年半にわたって正式政府不在の異常事態が続いていたベルギーで5日、国王アルベール2世が、6党による連立交渉をまとめたワロン(南部フランス語圏)系社会党のエリオ・ディルポ党首(60)を新首相に任命した。6日の任命式を経て、正式に新政権が発足し、北部オランダ語圏と南部フランス語圏の激しい地域対立による政治空白が解消される。
AFP通信によると、ディルポ党首は、フランス語圏出身者としては37年ぶりに首相に就任する。昨年6月の総選挙以来の政治空白は540日に達した。
総選挙では、オランダ語圏の将来的な独立を求める新フランドル同盟が下院第一党に躍進。新フランドル同盟は高い人気を背景に、懸案となっていた首都圏の選挙区割り問題などで、妥協を拒む強硬姿勢を取り、連立政権参加を拒否。今夏からは、ディルポ党首主導で、新フランドル同盟を除く南北の政党による枠組みで連立協議が行われていた。
一方、11月には、欧州債務危機の波及により、ベルギー国債の利回りが上昇。さらに米大手格付け会社がベルギー国債を格下げするなど、危機への対応が急務となり、停滞していた連立交渉が一気に進展した。
(引用終わり)
選挙後に正式政権が不在だった期間はイラクを抜いて世界最長記録。不名誉な記録を西ヨーロッパの国が作ってしまった。それにしてもフランス語圏出身の首相は37年ぶりというのだから、いかにオランダ語圏が政治的、経済的に強いかを見てとれた。
ベルギーの産業構造は、オランダ語圏は自動車産業や重化学工業であるのに対し、フランス語圏は農業、鉱業(第1次・2次産業)であり、さらにベルギーの人口の約6割をオランダ語圏が占めている。こうなればオランダ語圏が強くなるのは自然のことだ。フランス語圏は日本に例えると東北みたいな地域だ。
毎日新聞(5日)の記事によると、連立政権発足で合意した「6党は環境政党などの協力も得て、連邦政府から仏語圏、オランダ語圏の地域・地方政府に社会保障などの権限を移譲する改革を行う。しかし、オランダ語圏はさらなる独立性を求めており、言語圏対立が新政権を揺さぶることになりそうだ」。
新政権発足も前途多難。将来的にはチェコスロバキアのように、南北分裂も十分考えられる。ベルギーの将来が心配になってきた。私たちが次回ベルギーに行く時、ベルギー王国が存在しているのかすらわからない。
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Last updated
Nov 23, 2022 09:47:08 AM
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