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テーマ:映画レビュー(889)
カテゴリ:フランス映画
19世紀半ば、カナダのフランス領サン・ピエール島でよそ者が酒を飲んだ勢いで殺人事件を起こしてしまう。裁判はこの殺人犯ニールに死刑を宣告した。フランス本国から処刑のギロチンが届くまで島に駐留する軍隊の隊長とその妻ポリーヌは、ニールに人間らしく生きられるようポリーヌの身の回りの手伝いを頼む事にする。 隊長とポリーヌは深い愛情で結ばれた夫婦です。 死刑囚二ールに対してポリーヌは最初は同情に似た感情があったのかもしれません。 ギロチンが届くまでは長い日数がかかり、粗野で無教養ながらどこか素朴でやさしさのある二ールにポリーヌは少しずつ惹かれはじめます。二ールも又ポリーヌへの感情が芽生え始め。 そのあたりの様子が危なっかしく、狂おしく描かれています。 そして、妻の変化を分かっていながらも何も言わず見守る夫。 全く違ったタイプの二人の男性を愛してしまった女性。それが分かっているのに責めもせず、表面だった嫉妬も見せない夫。確かにポリーヌに愛情を感じ始めた二ール。何と言えないこの三角関係、観ている側をハラハラでもなく、なにかジトーっとした感じにさせるのはさすがにルコント。 島の人を助けたりしていくうちに二ールは人気者になり、彼の死刑を反対する者が出てくるのですが、死刑制度取り組んだ作品としてはあまり説得力はありません。それよりも、罪を犯してしまった人間の来る日までの人々との関わりを描いている、と言った方がいいのかもしれません。 そしてもう一つのテーマが、無償の愛 とでもいいましょうか。 隊長は結局妻のするようにさせてしまった、最後まで何も言わずに。 ポリーヌを愛するが故の行動でしょう。 ポリーヌも又二人の男性への愛の為にある思い切った行動を起こし、そして最後は夫への愛を貫いたのですが、時にこの愛と言うものは悲劇と表裏一体なのかもしれません。 ポリーヌの二ールへの愛は後に男性への愛と言うよりも、人間愛、母性愛と言ったものに昇華して言ったようにも思えます。 二ール役は『パパは、出張中!』や『ライフ・イズ・ミラクル』の監督エミール・クストリッツァだったのですね。 ビノシュとオートゥイユははまり役なのではないでしょうか。 寒いサン・ピエール島の冬景色と灰色の空。全体的に重い空気が流れていました。 LA VEUVE DE SAINT-PIERRE 1999年 フランス 監督:パトリス・ルコント 脚本:クロード・ファラルド 出演:ジュリエット・ビノシュ、ダニエル・オートゥイユ、エミール・クストリッツァ、ミシェル・デュショソワ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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