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2005.02.20
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無情の世界
阿部和重『無情の世界』
~新潮文庫~

「トライアングルズ」小学六年生の私に家庭教師がついた。彼は私の父の不倫相手に一目惚れし、彼女をストーキングし、二人の仲を裂くために私に接近しようと考え、私の家庭教師になったのだった。しかし、彼の思惑は別の方向に向かった。
「無情の世界」不愉快な経験をした夜、インターネットで露出趣味の女性の告白ページを見ていた僕は、実際に露出している女性を見て自慰をしようと、外に出る。その結果、大変な事態に陥ってしまう。
「鏖(みなごろし)」夫のいる女性と付き合っているオオタは、バイト先の商品を盗んだり、金を取ったりしていた。店主の弱みを握っていたため、調子にのっていたのだが、ついに窮地に立たされることになった。逃げ回っていたある日、不幸がいくつも重なる。

「鏖」について。「不幸がいくつも重なる」と書いたけれど、それは結局オオタがまいた種であり、タケダらはタケダらできわめて醜く感じたけれど、自業自得の面もあるのではないかと感じた。つまり、「不幸」というより、身から出た錆、というか。
 聖月さんの日記を読んで、読もうと思ったのが本書、『無情の世界』。私にとって阿部さん初作品。
 なんというか、悲惨な話だなぁと思う。不倫にストーカーに妄想に暴力。私には重たい話だった。
 好きな話は「トライアングルズ」。登場人物のどの人物にもなりたくないと思うけれど、家庭教師の演説はとても楽しめた。就職試験の面接の話など。
 いつものようにのぽねこ回想シーン。最初の本格的な面接は、高校入試のときだった。中学校でも面接練習があり、五人の生徒に何人かの生徒という形で行われた。いわゆる集団面接のスタイル。その中で、「好きな食べ物」は何ですか、という質問が出た。私は一番最後だったと思う。クラスメートたちが答えていき、最後の私が「餃子です」と答えると、ちょっと笑いが起こった。少なくともクラスメートの一人は、再面接になったはず。私の発言のせいだとすると、悲劇的である。
 今のは完全に脱線。私立高校の面接、大学は私立の面接あったっけなぁ。ちょっと思い出せないが、その次が教員採用試験、そして岡山大学大学院入試である。
 教員採用試験は、一次の自由討論(受験者六人?が一つのテーマについて討論する。試験監督は時間がくるまで一切口をはさまない)はとても面白くて、試験されているというより討論自体を楽しんだ。しかし、二次試験の面接は悲劇的であった。もちろん不合格。
 でも、そのおかげで、大学院で研究を続けるという新しい道が開けたのだ、という無理矢理ポジティヴシンキングをしてみている。実際問題、少なくとも今の私は、教員になるより大学院で研究する方が向いている。大学の同期もそう言っていたし。
 ともあれ、あの面接ってのはやっぱりどうもねぇ。数分間で人を判断するんだからねぇ。日常生活ではまず使わない言葉遣いと態度でもって受験者はのぞむわけだけれど、試験官はその裏にある本性を見いだしていくのだろうか。実際はうまく見いだせていないからいろいろと起こるんだろうけれど、とも思ったり。
 面接の話からここまでひっぱってみた。
「無情の世界」。本当に無情だ。
 前二作が一人称スタイルであるのに対して、「鏖」は三人称スタイル。オオタが中心人物なのだけれど、ところどころで不意に視点が変わる。視点が一定のスタイルに慣れているので、おっ、と反応してしまう。これはこれで良い手法だと思うけれど。視点が一定だと、一つの事柄に対する一つの見方しか示せないが、ある場面でふっと視点を変えることにより、基本的な視点からはうかがえない別の見方が示される。同じ出来事を複数の視点で書いている場面もあったし、こういうのもありか、と勉強になった。
 関連して。ある一つの作品は、視点を変えることで、無限の物語に広がると思う。この世界もそう。客観的現実は一つだけれど、主観的現実は無限にある。





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Last updated  2007.11.10 09:33:03
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