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2005.11.13
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綿矢りさ『インストール』
~河出文庫~

(あらすじ-細かく書いてしまいました)
「インストール」

 受験戦争の真っ只中。みんなと同じ道を進むなんていや、という朝子に、光二は、ちょっと休んでみたら、と提案。朝子は無遅刻無欠席を続けてきたが、学校を休むことにする。夕方に目覚め、部屋の光景に愕然とし、彼女は家具を全て捨てた。一つだけ、祖父からもらったコンピューターだけはなかなか捨てる決心がつかなかったのだが、電源をいれても壊れているようだと判明し、捨てに行った。
 ごみ捨て場でごろんとしていると、小学生に声をかけられた。朝子は、自分が捨てたごみの中で、欲しいものならなんでもあげる、と彼に提案。男の子(かずよし)は、コンピューターを希望した。ひょんなことから再会した二人。コンピューターは直ったという。もう何日も学校に行っていない朝子に、かずよしはコンピューターを使った仕事を提案する。「チャット嬢」である。かずよしが、メル友から紹介された仕事だった。二人は時間ごとで分担して、「チャット嬢」の仕事をはじめる。
 しばらく仕事を続ける朝子。しかし、紹介してくれた相手から、給料とともに仕事の終わりを告げられる。朝子はまた、戻るべき生活を、かずよしは家族のことについて、決断するときがくる。

「You can keep it.」
 他人にものをあげまくる城島。他人に喜んでもらいたい、同時に、ものを受け取った相手よりも強い立場にいたい。
 彼は、大学生。
 彼には、気になる女性がいた。あるお昼休み、彼女が一人でいるところにはなしかけ、二人で話していると、キャッチボールをしていた学生のボールが彼女-綾香の顔にあたった。キャッチボールをしていた二人は、彼女が冷やしてきて、と言ったバンダナと氷を持ってきた。授業に行く前に、綾香は城島に、その氷をくれた。
 彼女に何かあげたい。でも、できれば、値が張らないものがいい…。城島は、彼女にあげるものを考える。

(感想)

「インストール」
 とても読みやすかったです。行数も一行あたりの文字数も少ないのもあるでしょうが、文体も。
 物語は高校三年生、17歳の朝子さんの一人称で進められます。沈黙の時の恐怖、「不器用」についての考え方など、興味深く読みました。誰かといるときにふと起こる沈黙は、気詰まりになるものです。それが気詰まりにもならないくらいの関係になれたらいいのかな、と思いますが。そして、「不器用」について。この作品は短いので、それほど具体例は出てきませんが、何人か不器用なひとたちが登場します。それも、「マイナスの不器用」。なるほど、不器用にも種類があるか、と感じました。
 チャットの描写に出てくる、青璽さんが、こわかったです…。
 一時間強くらいで読めたでしょうか。朝子さんがサバサバした性格のせいか、全体的にさわやかな感じで、母親とのある会話で少し方向が変わるのですが、ラストもまたさわやかにしめくくられます。
 32頁。幸せな生き方について、朝子さんが語っています。17歳の彼女の、受験もまだきていない、数ヶ月ばかりの物語ですが、その数ヶ月は、彼女にとって、幸せな思い出になるんじゃないかな、と思います。

「You can keep it.」
 表題作よりも、いまの私には訴えてくるものがありました。いまの、というのは、今後読むときには、感想が変わることは大いにありえるからです。
 ものをあげる。そうして、人と絶妙な-私は、アンバランスな、と言いたいですが-距離をたもつ。
 結局城島さんは、「インストール」の中の言葉でいえば、「不器用」な人間なのでしょう。
 綾香さんに嘘をついたときはびっくりしました。どうしてそんなに自分を飾るの? …でも、ラストは微笑ましかったです。授業。それは大学の授業でもあるでしょうが、城島さんが生き方を考えていく上での、「授業」になるのでしょう。





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Last updated  2009.02.21 21:26:14
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