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2007.02.12
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島田荘司『最後のディナー』
~講談社ノベルス、2001年~

 三つの短編が収録された短編集です。フリーページに感想を書いていましたが、あまりに素っ気ないのに加え、内容をほとんど覚えていなかったので、再読しました。

「里美上京」1996年4月。『龍臥亭事件』で知り合った犬坊里美が、横浜のセリトリス女子大学に転入し、石岡さんに連絡を寄越します。石岡さんは、里美さんに横浜の街を案内します。それは、20年前に、良子さんと歩いたのと同じ道でした。街の様相は変わり、石岡さんの内面にも変化があります。
 ほとんどボーナストラックのような短編ですが、石岡さんと良子さんのことを考えると胸が熱くなります。『龍臥亭事件』でも、死を覚悟したときに石岡さんが考えたのは、御手洗さんと良子さんのことでした。そんなことを考えて、しみじみとしました。シリーズものを通して読む良さの一つですね。

「大根奇聞」里美の大学の教授、御名木と知り合った石岡は、後日、彼と再会する。そこで御名木は、父親がずっと悩んでいたという歴史上の謎について話をした。 1838年、病に苦しむ僧侶とその弟子が鹿児島を訪れたとき、桜島の噴火によって一体は灰色の地獄のようになっており、飢饉で多くの人が死んでいた。二人を助けた老婆の家の近くの畑には、立派な大根がなっていたが、大根をとった者は処刑するというお上からの通達が出されていた。二人の身を案じた老婆は、大根を盗み、二人に食べさせる。しかし、二人の僧侶が後に残したこのときのことを回想する記録の中では、老婆は処刑されることなく生きていた。当時の状況を考えると、大根を盗んだことが露見すると、処刑は免れなかったはずである。なぜ、老婆は助かったのか―。そういう謎だった。

 石岡さんが「大根奇聞」の話を聞くのが、1996年5月。たまたま御手洗さんから電話がかかってきて、石岡さんがこの話をすると、あっという間に謎は解決です。とても素敵な物語でした。
 なお、御手洗さんと石岡さんの連絡は、1997年一月まで途絶えることになります。

「最後のディナー」石岡は、里美に誘われ、苦痛にもかかわらずNOVAに通うことになった。レヴェル7のCの教室で、石岡は大田原という老人と出会う。その穏やかな風貌に魅力を感じて、石岡は大田原とレッスンの後にコーヒーを飲むようになる。そして、クリスマスが近くなり、大田原は石岡と、同じく親しくなっていた里美をディナーに誘う。アパートを引き払うからと、コーヒーカップを二人にプレゼントする大田原。その後、行方をくらませた彼は、殺人事件の被害者として新聞に載ることになる。

 こちらも、殺人事件は悲しいですが、そのためもあり、素敵な物語となっていました。石岡さんの卑屈な感じも、むしろ清々しい感じで好きです。面白かったところをメモ程度に紹介。NOVAのレッスン料が安いと聞いたときに、石岡さんは次のように感想を書いています。「それなら鍼治療よりは安いなと私は思う。[……]だが鍼は気持ちいい。英語は気持ちがよくない」(155頁)。石岡さんファンも多いそうですが、納得できる一文です(ファンになる根拠は全く違うのかも知れませんが…)。

 本書は12月に発売されています(単行本は11月のようですが)。どの短編もすらすら読めますし、感動できる要素もあります。表題作の内容もあり、クリスマスにいい一冊かと。
 昨日、『龍臥亭事件』を読了したので、次は『龍臥亭幻想』を読もうと思っていたのですが、吉敷竹史シリーズをもう少し読み、少なくとも『涙流れるままに』は読んでおきたいと思ったので、読むのはもう少し先になりそうです。『犬坊里美の冒険』も、読むのは先になりそうです。
 今回は、『龍臥亭事件』の後ということもあり、「里美上京」が収録されている本書を読むことにしました。しばらく、フリーページに簡単な感想しか書いていない御手洗シリーズを再読して、記事にしたいと思っています。





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Last updated  2007.02.12 12:17:31
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