カテゴリ:本の感想(さ行の作家)
島田荘司『消える「水晶特急」』
~光文社文庫、1991年~ 吉敷竹史シリーズ番外編(?)の長編です。今回の主人公は、雑誌記者の島丘弓芙子さんと蓬田夜片子さんです。 それでは、内容紹介と感想を。 1985年4月1日。豪華展望車両のついた、<クリスタル・エクスプレス>の試乗会が行われる。代議士・加灘耕平が関係しているため、彼の出身地である酒田を目指して、上野を出発するのだった。ところが、耕平自身が脳梗塞で倒れてしまったため、彼の娘である晴美が乗ることになった。 この列車に、雑誌L・Aの担当記者である蓬田と、カメラマンの国田も乗っていた。ところが、この電車で事件が起こる。トレイン・ジャックされてしまったのだった。 犯人の男は、自分の父が加灘耕平に殺されたことを訴え、加灘自身を呼び出し、その犯罪を暴露することを目的としていた。その目的を果たすため、蓬田が標的となる。男は、女性以外を解放し、女性5人(中にはもちろん加灘晴美もいる)のみを人質とした。そして、酒田に向かう途中、行き違いなどで停車する駅で、加灘の犯罪のことを社に連絡し、記事にするよう、蓬田に要求したのだった。 社では、蓬田の相棒の島丘が、彼女からの連絡を受けた。しかしやがて、島丘や、そこに集まっていた新聞記者たちに、驚くべき事態が起こる。酒田に向かう前に、最後に停車する駅を出てから、<クリスタル・エクスプレス>が消えてしまったというのである。単線で、電車が横道にそれることは不可能であるにもかかわらず…。 しばらくして、<クリスタル・エクスプレス>に乗っていた、新人歌手の曲の中に、「クリスタル特急消えた」という歌詞があり、その曲が売り上げを伸ばし始めた。事件に関係があると考えた島丘は、同社の男の協力をえながら、事件の調査に乗り出した。 これは面白い、と思いました。電車が消えたという謎は、それは魅力的です。その件に関する警察―そして、吉敷さんの対応にも謎があり、<以下、文字色反転>警察が電車消失になんらかの関わりがあることは想像がつくのですが、それがどう関わっているのか、とても気になりました。さらにいえば、蓬田さんが電車の中で「島丘さん」を見たことも、とても興味深い謎でした。後者の真相には、たしかに笑ってしまいましたが、関係者にしてみれば笑い事ではなかったのでしょうね<ここまで>。 本書の場合、途中から島丘さんの視点で物語が進むからこそ、興味深いミステリとなっています。たしかに、吉敷さんは物語の探偵役たりえなかったといえるでしょう。ただ、両者の立場ごとに謎もあるわけで、二人の出会いから事件が一気に解決に向かう様子も、読んでいて面白かったです。 無茶な話といえば無茶な話ですが、そんなこと抜きに楽しめました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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