カテゴリ:本の感想(や・ら・わ行の作家)
横溝正史『獄門島(金田一耕助ファイル3)』 ~角川文庫、1996年改版初版~ 金田一耕助シリーズの長編です。『本陣殺人事件』の次に発表された金田一シリーズ作品ですね。 あまりにも有名ですが、内容紹介と感想を。 昭和21年(1946年)9月。 「俺が死んだら、三人の妹たちが殺される。獄門島へ行ってくれ」―戦友の鬼頭千万太の言葉を受け、彼が託した紹介状を持って、金田一耕助は瀬戸内海に浮かぶ小島、獄門島を訪れた。 漁師の多い島のこと、網元の鬼頭家が大きな力を持っていた。また別格の人々が、千万太が紹介状をあてた和尚、村長、医師の三人。耕助は、和尚のもとにしばらくとどまることになる。 鬼頭家は本鬼頭と分鬼頭に分かれていた。絶大な権力を握っていた本鬼頭の前当主は亡くなり、息子は錯乱して家の座敷牢に入れられていることから、孫の千万太、そのいとこの一に期待がかけられていたのだが、その千万太が死んだ。跡取りをめぐる、血なまぐさい事件―千万太の最後の言葉が実現される嫌な予感を抱く耕助だが、ついに事件が起こる。 鬼頭家の、千万太の三人の妹―花子、雪枝、月代のうち、花子が、千万太の通夜の夜に行方不明になる。彼女の遺体は、寺の木の枝から、逆さに吊されていた。 さらに、事件は続く。花子の次の犠牲者、雪枝の遺体は、釣り鐘の中に閉じこめられていた。恐ろしい事件が続く中、本鬼頭をほとんど一人で支えている早苗も、不審な行動をとりはじめる。 私はどうにも、有名すぎる作品は敬遠する傾向があり、本書も、それほど繰り返して読んでいるわけではないのですが……ものすごく面白かったです。例によっていろんな筋を忘れてしまっていたこともあり、ぞくぞくしながら読み進めました。 獄門島の警察官、清水さんも素敵な人で、勘違いで金田一さんを留置場に入れてしまいますが、その人柄がよいので、まったくもやもやが残りません。なにより嬉しかったのは、清水さんが磯川警部に出会ったと聞いたときの、金田一さんのリアクションです。こちらまで嬉しくなって、もらい泣きしそうになりました。 金田一さんが犯人と語るシーンでも、じーんときてしまいました。 俳句、見立て……事件を彩る要素にもぞくぞくします。金田一さん自身も含め、登場人物たちの心情にも胸を打たれます。ミステリとしても物語としても、感動しました。 やっぱり面白い! 金田一さんの経歴について、あらたに分かったことをメモしておきます。 久保銀三さんの援助をうけ、アメリカで勉強していた頃、金田一さんは看護夫見習いみたいなことをしていたそうです。多少は自分でも稼ごうという意識もあったようですが、将来的には探偵になるということも意識されていたとか…。 さて、『本陣殺人事件』を解決した後、戦争がはじまると、金田一さんも召集されることになります。彼は、最初の二年間は大陸に行き、島から島へと送られ、終戦時には、ニューギニアにいました。そこで、千万太さんと出会い、良き戦友となったのでした。そして、千万太さんの遺言を果たすため、久保銀三さんに挨拶した後、獄門島へ向かったのでした……。 『獄門島』事件を解決し、東京に戻る汽車の中で、中学時代の風間俊六さんと出会い、「松月」で居候することになるあたりのことは、「黒猫亭事件」(『本陣殺人事件』収録。記事はこちら)で語られています。 *表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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