カテゴリ:本の感想(あ行の作家)
浦賀和宏『学園祭の悪魔』 ~講談社ノベルス、2002年~ 講談社ノベルスでの第6作、安藤シリーズの第5弾です。『眠りの牢獄』同様薄い本で、200頁弱です。 では、内容紹介と感想を。 ーーー 三日間の学園祭。クラスで出しているフランクフルトの店にいた「私」は、ナンパ男に声をかけられる。男には、無愛想な男と、挙動不審な男という連れがいて、挙動不審な男はクラスメートの穂波留美の兄、無愛想な男は留美の彼氏だと知る。 クラスでも目立たない、おとなしい留美の彼氏ということで、クラスメートはわき、私もわいたが、同時に激しい嫉妬にも襲われた。どうして明るい私に彼氏がいないのに、暗い穂波に彼氏がいるのだろう、と。 二日目、三日目も穂波の彼氏―安藤直樹は学園祭に顔を出した。どうも私に気があるらしい…? 安藤に興味をもった私は、彼の電話番号を聞き出し、何度か話をする。穂波が、安藤のことを「名探偵」だと言っていたこともあり、近頃近所で起こっている、連続殺犬事件について相談した。両親の不仲に悩まされる仲、家では飼い犬の力丸だけが心を許せる存在。その力丸が、事件の被害にあうことを恐れたのだった。 一方安藤は、妙子という名前の女性を惨殺している殺人犯に、興味をもっているようだった。 ーーー もちろん、本作も既刊のシリーズ作品が前提とはなっているのですが、過去にもどって話がからんでくるわけではありません。前の作品の登場人物の関係性をあまり知らなくてもついていけますね。 主人公の「私」の文章が、割とさばさばしていて、明るくて読みやすいのですが、第一部の末で事件が起こってから、若干トーンが変わります。 穂波さんと友達になれたかと思っていたのに、ひどい仕打ちばかりされることに。ついに堪忍袋の緒が切れた「私」は、ある行動に出ることになります。 穂波さんとぎくしゃくし、クラスでも孤立していくあたりは、ホラーな感じでした。特に、第一部が割合楽しい雰囲気で流れていく分、そのギャップにやられます。 やかん君というのは、マンガのキャラクターだそうで、そのマンガに登場する他のキャラクターの紹介などのあたりはとても楽しく読みました。 …本当に、思いもよらない結末です。すごいですね…。 ラストを思えば、今回の話は、もっと大きな物語のほんの一部…というか、つなぎのような印象さえ受けます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.11.19 06:26:36
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