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2008.05.26
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ジャック・ル・ゴフ「歴史学と民族学の現在―歴史学はどこへ行くのか―」
(Jacques Le Goff, "Histoire et ethnologie aujourd'hui")
ジャック・ルゴフほか(二宮宏之編訳)『歴史・文化・表象―アナール派と歴史人類学―』岩波書店、1999年、15-45頁

 ジャック・ル・ゴフ(Jacques Le Goff, 1924-)は、アナール学派第三世代を代表する著名な中世史家。多くの著作が邦訳されています(所有文献一覧を参照)。
 こちらの論考は、彼が1976年秋に来日したときに行った講演だそうです(編訳者あとがき、257頁)。
 では、レジュメ風に整理しておきます。

ーーー
[序]
・歴史学と民族学(人類学)の対話→「民族学的歴史学」「人類学的歴史学」が生まれつつある

一[歴史学と民族学の関係―過去と現在]

(1)歴史学と民族学の関係(過去)
 ○ギリシャ時代)ヘロドトス…両者の密接な関係
 ○ローマ時代)タキトゥス~、ローマ史中心の見方に
 ○キリスト教
  ・キリスト教徒の歴史が中心
  ・民族学的見地を受け入れる素地はある∵普遍性への志向を持つ信仰、全ての人類が歴史に参与するはず
 ○中世)聖職者が、民族学者の仕事をなしている事例…ティルベリのゲルウァシウス
 ○ルネサンス
  ・一方に正統歴史学…政治上の変遷を追う
  ・他方に、民族誌に深い関心を示す知識人…例)ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル物語』
 *19世紀半ば、歴史学と民族学の別れが決定的に→現在、両者の対話へ

(2)歴史学と民族学の接近(人類学の側から)
 1.「冷たい社会」(いわゆる「未開社会」)が熱くなる←大戦後、植民地独立
  →このような社会にも歴史があるという事実の認識
 2.エヴァンズ=プリチャード、人類学の欠陥を指摘
  →歴史学者のような史料批判の方法、対象とする社会の歴史をする必要性など
 3.政治人類学(ex.バランディエ)の成果
  →「未開社会」にも変化が認められる
 4.構造主義の影響
  →「人間」を通じて社会を全体的にとらえる視点

(3)歴史学と民族学の接近(歴史学の側から)
 1.長期持続(歴史を長期的な時間の幅において捉える)の視点
  →深部において長期にわたり持続している現象、緩慢にしか変化しない現象に注目
 2.日常的物質文化への関心
  →「不変の歴史」と思われる現象にも変化、「歴史」がある
  例)フォークの普及(ノルベルト・エリアスの研究)
 3.深層において歴史を捉える(=深層歴史学)
  a)からだの面;b)こころの面=心性の歴史

二[民族学的歴史学の諸特徴]

(1)歴史学と資料の関係→文書資料以外の資料への着目
 a.考古学的な資料…それらを系列として捉えていく
 b.語られた言葉…説教、物語の中の会話等から読み解く
(2)時間…時間=尺度を、どの階層がいかに支配したか
(3)空間…象徴的空間の重要性
 a.マクロな視点…例)托鉢修道会と都市の関係
 b.ミクロな視点…例)都市における「ホット・スポット」(領主の館、市庁舎、教会など)

三[新しい歴史学の成果]

(1)身体…身振りの重要性
(2)神話…メリュジーヌ伝説など
(3)煉獄の観念
(4)夢の問題
 ・ギリシャ、ローマ…夢は公然と認められる
 ・キリスト教、夢のシステムを逆転させる
  →夢の三つの原因
   a)神に由来する夢
   b)身体的な原因(食べ過ぎなど)による夢
   c)悪魔による夢…大多数
ーーー

 この中で面白かったのは、第一節の、歴史学と民族学の関係を通史的にまとめている部分です。
 また、第二節では興味深い問題設定が提起されていて、勉強になります。特に、空間に関する議論が興味深かったです。
 第三節には、新しい歴史学の成果と小見出しをつけてみましたが、実際にはル・ゴフが発表した研究の紹介、という性格が強いですね。ル・ゴフによる夢に関する論文もずいぶん前に読んで、すっかり忘れてしまっているのですが、身体的な原因による夢というのは面白そうですね。また読み返したいと思います。なお、メリュジーヌ伝説については、時間の関係上ふれられていません。
 それはとまれ、当時、他のアナール学派の研究者たちがどのような研究を発表し、それをル・ゴフがどのように評価しているかもふれられていると、もっと興味深かったかなぁと思いました。
 なお、心性史研究について、「時には経済史や社会史をやらないことのアリバイになるという傾きがないわけではない」という指摘には、どきっとしました…(苦笑)
(2008/04/26読了)





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Last updated  2008.07.12 17:39:33
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