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2008.06.05
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アンドレ・ビュルギエール「ヨーロッパ社会の研究における人類学と歴史学」
(Andre Burguiere, "Anthropologie et Sciences historiques―Societes europeennes―") ジャック・ルゴフほか(二宮宏之編訳)『歴史・文化・表象―アナール派と歴史人類学―』岩波書店、1999年、111-161頁

 アンドレ・ビュルギエール(Andre Burguiere, 1938-)は、アナール学派(第4世代?)に属する歴史家です。不勉強ながら、彼の個別研究を読んだことはないのですが、しばしば方法論に関する論文を発表し、最近では、アナール学派に関する単著(L'Ecole des Annales. Une histoire intellectuelle)を刊行しているようです。
 こちらの論考は、1977年、パリで行われたシンポジウムでの報告の邦訳で、前半はビュルギエールによる報告、後半は、何名かの研究者による批評・コメントと、それらへのビュルギエールの回答となっています。

 今回はレジュメの形ではなく、興味深かった指摘について書き留めておきます。

 報告は、次の三つの論点を軸にしています。
(1)歴史家の領域を、公的現実から日常的現実へと拡大すること=第1節「「バイ・パス」の技法」
(2)前工業化社会を、現代社会を準備し予告するものとしてではなく、「異なる」社会として探索すること=第2節「自文化から異文化へ」
(3)現代フランスに、延長かつ変容としてアプローチすること=第3節「異文化から自文化へ」

 第1節では、マルク・ブロックの名著『王の奇跡』()の重要さは、その問題に対するアプローチの仕方にある、と指摘します。
 この書物において、マルク・ブロックは、英仏において、瘰癧を治療するという王の奇跡について論じ、それが「いかなる王権論にも増して、王権の呪術性を表現している」ことを示しました。英仏の王制は、以前から長く論じられていたにもかかわらず、この王の奇跡をまっとうに検討する研究は行われていませんでした。
 ビュルギエールは、このことについて、こう言っています。『王の奇跡』が「歴史人類学にとって模範的な作品であるのは[……] 埋もれている表象体系にじかに到達するために敢えて回り道をした、このバイ・パスの技法によるところが大きいのです」(122頁)
 関連して、興味深かった指摘をメモしておきます。「権力なるものは、その姿をおおっぴらに示しているような場所には、真には存在していないという点にその特質があります」(123頁)

 第2節で興味深かったのは、個別的な地域研究などのケース・スタディーの意義についての指摘です。個人的には、個別的な地域研究はあまり読んでおらず、熱中したのはル・ロワ・ラデュリの『モンタイユー』くらいですが、そうした研究にはどのような意義があるか。ビュルギエールは、こうした研究が「前工業化時代のフランス発展の初段階やその構造について、われわれの知識を大幅に前進させてくれ」たのは、「これらの個別研究が、それぞれの地域に内在する固有の条件のうちに説明の根拠を求めることに成功したから」だと言います。
 「いかに現代の社会に近づいてきたか」ではなく、それらの社会が「異なる時代に属することを認めた上で、いかにそれらが機能していたかを明らかに」することの重要性が指摘されますが、これはなるほど、と思いながら読みました。
(2008/04/30頃読了)





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Last updated  2008.07.12 17:38:12
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