カテゴリ:本の感想(あ行の作家)
歌野晶午『ガラス張りの誘拐』 ~講談社文庫、1995年~ 歌野晶午さんの、ノンシリーズの長編です。 それでは、内容紹介と感想を。 ーーー 1989年~1990年。 佐原刑事は、妻を殺されてからというもの、被害者に対してきつい事情聴取をすることに苦痛を感じ始めた。そのため、一人で聞き込みをする時には、短時間で事情聴取を終えて、しばしばサウナで過ごすようになった。しかし、頭脳労働には長けていたため、そんな勤務態度も見逃されていた。 そんな彼は、連続婦女誘拐監禁暴行殺害死体損壊遺棄事件の捜査に携わっていた。発見された遺体には暴行の跡が見受けられ、さらに遺体の一部が持ち去られていた…。繰り返されるその事件の中、一人の被害者が奇跡的に犯人から逃れることができた。彼女の証言によりモンタージュ写真は作られたものの、犯人の居所などは不明のまま、捜査が続けられる。 そんな中、犯人の犯行声明文が新聞に取り上げられた。声明文によれば、一人の女子高生が誘拐されたらしい。佐原刑事は彼女を捜す中で、その高校の養護教諭、松浦梨花と知り合う。梨花は、すぐれた推理で佐原の捜査を良い方向へと導いてくれる。 * そして、佐原の娘が行方不明になり、山城と名乗る人物から、娘を誘拐したという電話がくる。山城の要求は奇妙なもので、完全な衆人環視の中で、身代金を持ってこいというのだった。 ーーー 内容紹介では簡単に二つの事件にふれましたが、本書は三つの事件が、最終的に一つにつながるといった形式の長編です。上では一つの事件に字数を割いてしまいましたが、圧巻は佐原刑事の娘が誘拐されるという、「第三の事件」です。 面白いのは、第二の事件も第三の事件も、なんとなくの解決は見ながら、すっきりとした結末ではありません。順番的には最後に置かれた第一の事件とエピローグで、それらのもやもやが解消されると同時に、気持ちよく驚くこともできます。 これは面白かったです。歌野晶午さんの再読&未読作品の開拓を始めていますが、歌野さんの作品が面白いことをますます実感しています。また機会を見つけて、他の作品も集めていきたいです。 (2009/04/25読了)
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