カテゴリ:本の感想(や・ら・わ行の作家)
横溝正史『悪魔が来りて笛を吹く』 ~角川文庫、1996年改版初版~ 金田一耕助シリーズの長編です。 作品冒頭で強調されているとおり、なんとも重たい陰鬱な物語です。…が、謎解きとしても、物語としても、ばつぐんに面白い作品でもあります。 それでは、内容紹介と感想を。 ーーー 昭和22年(1947年)9月~10月。 失踪し、自殺した(とされる)椿英輔の娘、美禰子が、金田一耕助のもとを訪れた。 父は、本当に死んだのでしょうか?―彼女はそう疑問を口にする。物事に影響をうけやすい母が、英輔の死を信じていないことに加え、彼女も椿家の使用人たちも、英輔に似た人物を見たというのだった。 英輔は、宝石店で店員たちを青酸カリで殺害し、宝石を奪うという天銀堂事件の犯人とも一時は疑われたことがあった。アリバイを証明し、なんとか疑いが晴れた後、彼は失踪し、そして死体も発見されているのだが…。 美禰子が金田一耕助を訪れた翌日の晩、椿家で占いが行われるという。椿家に住む新宮家の3人や、玉虫伯爵たちが集まるということで、耕助もそこに参加する。砂占いにあらわれた紋様に恐れる一族、そして鳴り響くフルートの曲「悪魔が来りて笛を吹く」…。英輔が失踪直前にレコードに吹き込んでいたその陰鬱なフルートの音色に、一族の恐怖はさらに高まるのだった。 そして、占いの行われた場で起こる密室殺人事件を皮切りに、陰惨な殺人が繰り返されることになる。 ーーー 金田一シリーズでは、金田一さんの穏やかな人柄が大きな魅力の一つで、もちろん本作でもそれを感じました。また、事件の終盤で金田一さんが苦悩に襲われる姿が、本作ではさらに印象的でした。 …上にも書いたように、とても面白く読んだのですが、しかしなんだかため息をつきたくなるような読後感です。ただ、すごい作品だと思います。 数年ぶり(もう10年以上経っているかもしれません)の再読ですが、良い読書体験でした。 *表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。 (2009/05/31読了)
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