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2009.12.22
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樺山紘一『ローマは一日にしてならず―世界史のことば―』
~岩波ジュニア新書、1985年~

 樺山先生の『中世の路上から』を読了して、次の枕元&昼休みの友に選んだ一冊です。岩波ジュニア新書ですが、内容的には世界史をひととおり勉強している高校生にちょうど良いかも…?(私は、高校生の頃に読んでいれば良かったと思いました)。
 そういえば私が高校在学中、とびきり頭の良い教師がいて、最近の新書の質の低下を嘆いていらっしゃいましたが逆にいえば、過去の「ジュニア」新書は、それなりに読み応えがあったんだなぁ、と感じました(少なくとも、ある程度世界史の流れを把握していないと、ぴんとこないところもありそうです)。
 さて、本書には104の明言が収録されています。時代や地域別に、10このまとまりに分けられていて、それぞれの部の標題には、その時代・地域、あるいはテーマを代表する言葉が選ばれています。
 ということで、本書の構成は以下のとおりです。

ーーー
まえがき

1 汝自身を知れ
2 ローマは一日にしてならず
3 エジプトはナイルの賜物
4 怪力乱神を語らず
5 乙女よ、行きてフランスを救え
6 朕は国家なり7 第三身分とは何か、すべてである
8 人民の、人民による、人民のための政府
9 西部戦線異状なし
10 人間は考える葦である

さくいん
ーーー

 104の言葉の中には、恥ずかしながら初めて聞いたもの、聞いたことがあるようなもの、知っていても誰の言葉かを知らなかったり、あるいは正確な意味を知らなかったりしたものもあって、勉強になりました。
 ということで、まずはそんな言葉をメモしておきます。

 たとえば、第1部の標題になっている「汝自身を知れ」。私はてっきり、「無知の知」とともにソクラテスの言葉だと思っていたのですが、それ以前に、デルフォイのアポロン神殿に刻まれていたとのことでした。
 その他第一部では、「ピロスの勝利」(敵になんとか勝ったものの、自分の陣営もも莫大な犠牲を払った)、「ファビウスの勝利」(カルタゴと戦ったローマの将軍で、強いカルタゴに正面からぶつかるのではなく、相手が疲れるのを待ってから攻撃して勝った)という言葉(背景)ははっきりとは知りませんでした。いやはや…。そしてこのファビウスの名が、後にウェッブ夫妻らイギリスの社会主義者たちが作る「フェビアン協会」の名に使われているというのも、とても勉強になりました。

 第3部は、諸子百家の時代から10世紀頃までの、中国の著名人の言葉を集めていますが、こちらは今回あらためて正確な意味を知った言葉が多かったです。知識の偏りを痛感しますね…。
 荘子の「胡蝶の夢」などは、どこか江戸川乱歩の「現世は夢、夜の夢こそまこと」の考え方を思い出しながら読みました。

 第4部では、マキァヴェリの「君主は狐とライオンのように」が特に勉強になりました。彼は暴君的な君主の必要性を説いたというイメージがありますが、『君主論』執筆の背景や引用した言葉の意味を簡潔にまとめていて、あらためて知識が整理されました。

 第7部、フランス革命時代の言葉のなかでは、ロラン夫人の「自由よ、汝の名のもとに、なんたる罪が犯されてきたことか」という言葉を今回初めて知りました。自由を求めて起こったフランス革命が、すぐにロベスピエールを中心とする急進派の恐怖政治に移り変わっていったというのは、なんとも皮肉なことですよね…。
 そしてナポレオンの有名な言葉、「余の辞書に不可能という字はない」。これは正確には、「不可能という語は、フランス語ではない」だったそうです(本書の性格上仕方ないですが、出典の明示がないのが勿体ないですね)。
 もうひとつ、これは言葉も人物も恥ずかしながら知らなかったのですが、クラウゼヴィッツ(1780-1831)が『戦争論』という書物の中で述べた「戦争は、ほかの手段をもってする、政治の延長である」というのも勉強になりました。この『戦争論』、レーニンも愛読していたそうです。

 第9部は、第一次世界大戦から1970年頃までの時代から、言葉を集めています。 …レマルク『西部戦線異状なし』、恥ずかしながら知りませんでした…。が、本書を読んで知ることができて良かったです。

 第10部は哲学者、作家、音楽家など、芸術・文化関係の著名人の言葉を集めています。スタンダールの「生きた、書いた、愛した」という言葉は有名なのですね…。そもそも『赤と黒』も『パルムの僧院』も読んだことがないので、今後の目標は広がりますね。

 いろんな歴史上の言葉を知ることで、教養が身につくだけでなく、それらの言葉から、今日の自分や世界・時代を考えるきっかけが与えられるような、良い読書体験でした。
 本書は、高校世界史の教員が授業のネタに使うのにうってつけではないか、と思います(私が教わっていた先生も、もしかしたら…?)。

(2009/12/19読了)





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Last updated  2009.12.22 06:51:22
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