カテゴリ:本の感想(あ行の作家)
綾辻行人『迷路館の殺人』 ~講談社文庫、1992年~ 館シリーズ第三作です。 あらためて、この文庫版が刊行されてから20年が経つのかと思うと、月日の速さを実感しますね…。私がはじめて読んでからも、もう15年にはなりますし…。 とまれ、簡単に内容紹介と感想を。 ーーー 大家ともいうべき推理作家、宮垣葉太郎は、「迷路館」なる建物に移住し、もう執筆活動を行わないと宣言していた。 そんな彼が、自身が育てた4人の推理作家、そして編集者や評論家たちを、誕生日パーティに招待する。たまたま、招待されていた編集者夫婦と道中で一緒になった島田潔も、宮垣と親しいこともあり、パーティに参加することになる。 島田は、「迷路館」が中村青司の手による建築であることもあり、興味を持っていたのだった。 ところが、集まったメンバーには、宮垣が自殺したと、その秘書から知らされる。同時に、彼の遺言ということで、4人の作家が、「迷路館」を舞台にミステリを書くように命じられるのだった。 奇妙な状況のなか、「競作」は開始される。しかし、現場のパソコンに書かれた、ミステリの犯行現場そっくりの状況で、作家たちが次々と殺されていき…。 ーーー 本書に関していえば、文庫版よりも、ノベルス版の方が、見た目がずっと面白いと思います。 というのが、綾辻行人さん作『迷路館の殺人』の中に、作中人物である鹿谷門実作『迷路館の殺人』が挿入されている(扉も奥付もあります)という、凝った作りになっているからです。 文庫版だと、作中作の表紙・奥付がノベルス版のままなので、媒体の違いがでてきます(作中作も文庫化してたら、いろいろ変ですが…)。 とまれ、本書はまず、そうした凝った作りが面白いです(作中作の奥付の、発行者の名前がまた、楽しんで書かれている感じがします)。 現場のパソコンに表示されているミステリのとおりに事件が起こるなど、魅惑的な謎の提示ももりだくさんです。 私は何度目かの再読で、ミステリの筋をいろいろ忘れるものの、本書の大きな山はどちらも覚えていました(忘れたくても忘れられない…)。 だからこそ、今回は伏線の妙を楽しみながら読めましたし、また一方、細かい部分の流れは忘れていたので、論理的な解明の部分は新鮮な気持ちで読めたりと、楽しい読書体験になりました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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