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2012.08.26
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北村薫『空飛ぶ馬』
~創元推理文庫、1994年~


 北村薫さんのデビュー作。女子大生の「私」と、その大学の先輩にあたる噺家、春桜亭円紫さんのシリーズ第1作です。
 本書は、5編の短編からなる連作短編集となっています。
 それでは、それぞれについて、簡単に内容紹介と感想を。

ーーー
「織部の霊」
 朝早くに大学に着いてしまった私は、近世文学概論を担当している加茂先生と出会う。授業で、私のことを覚えてくれていた先生と話す中で、私は、卒業生で大ファンの噺家である春桜亭円紫と会談する機会を持つことになる。その後、3人で打ち上げをしている際、加茂先生は過去の不思議な話を打ち明ける。それは、見たことのないはずの人物を夢に繰り返し見て、しかもその人物は実在の人物だったという話だった。

「砂糖合戦」
 たまたま出会った円紫と、円紫おすすめの喫茶店を訪れた私。私はそこで、何度も何度も砂糖を紅茶の中に入れている、奇妙な女性3人組に気づく。加茂先生の不思議な話の謎を解き明かした円紫は、3人組の行動の意図も見抜いたようで…。

「胡桃の中の鳥」
 大学の同級生、高岡正子とともに蔵王を訪れた私。現地で、同じく同級生の江美と合流し、円紫の独演会や観光を楽しんだ私たちだが、蔵王山頂で、それは起こった。なぜか、江美が出してくれていた車のカバーシートが、外されていたのだった。

「赤頭巾」
 歯医者に行った私は、話し好きの中年女性に声をかけられる。最初は構えたが、それは気になる話だった。私も知っている女性―夕美子と、その中年女性は同級生だったという。その同級生から、赤頭巾の話を聞いたという。日曜日の夜ごと、公園に赤頭巾が出るというのだ。そして絵本作家である夕美子は、『赤ずきん』という作品も出していた。そしてそれは、ずいぶんアレンジのきいた作品となっていて…。

「空飛ぶ馬」
 近所のお店《かど屋》の国雄は、子供好きの人である。そんな彼が、近所の幼稚園でクリスマス会が開かれた日、店にあった木馬を保育園にプレゼントした。ところが、その夜中、幼稚園の庭に木馬がなかったという情報を私は聞く。はたして、木馬はなぜ消えたのか。
ーーー

 何年ぶりかの再読です。
 やっぱり、良かったです。ミステリではあるのですが、そういうジャンル区分にとらわれない、とても良質の物語だと思います。
 世の中の苦しいことにも、悲しそうな目をしながらもしっかりと見つめていく円紫さんと、目をそらしてしまいそうになる「私」(もちろん、目をそらしてはいけないと分かっていて、少しずつ変わろうとしつつあります)のコントラストが、素敵です。
 「私」のまわりの人々も素敵な人が多くて、悪意をあつかった物語もあるなかで、やはり全体としては優しい雰囲気の物語だと思います。
 良い読書体験でした。





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Last updated  2012.08.26 20:45:13
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