カテゴリ:本の感想(や・ら・わ行の作家)
横溝正史『迷宮の扉』 ~角川文庫、1979年~ 横溝さんによるジュヴナイルものの作品集です。表題作の他、2編の短編が収録されています。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ーーー 「迷宮の扉」燈台そばにたつ、通称竜神館を金田一耕助が訪れたとき、事件が起こった。15歳を迎える竜神館の主―日奈児を訪れた誕生日の使者が、何者かに殺害されたのだった。 日奈児の後見人と、日奈児と双子の月奈児の後見人―憎み合う夫婦たちが一堂に会したとき、双子の父親は衝撃的な遺言を残す。これが、さらなる惨劇への幕開けだった。 遺言書を管理することとなった金田一耕助のもとへ泥棒が入った夜、不可解な状況のなかでの殺人事件が起こる。 「片耳の男」ほこらに近寄る少女にチンドン屋が襲いかかるのを目撃した宇佐見慎介は、あわてて少女を助けた。聞けば、少女と、研究にいそしんでいる兄には、一年に一度贈り物が届くという。チンドン屋はそれを狙っていると思われるのだが―。その後、贈り物の秘密を伝えるという手紙が少女に届き、慎介も手紙の指定する場所へ同行することとなる。 「動かぬ時計」貧しい電話係の少女には、一年に一度、だれかから贈り物が届く。なかでも少女のお気に入りは、素敵な時計だった。 ーーー 表題作は、ジュヴナイルものといっても、中学生向けに書かれたものということで、他のよくあるジュヴナイルもののような怪人が出てきません(あえていえば、青い髪の毛が不気味な雰囲気を醸し出していますが)。また、金田一耕助が登場する他のジュヴナイルでは、金田一さんがどちらかといえば脇役で、少年探偵が活躍するようなイメージもありますが、本作ではしっかり金田一さんが主役になっています。さらに、密室的な状況での事件があったりと、ジュヴナイルものという先入観を覆すような作品でした。 併録された2つの短編のなかでは、「動かぬ時計」が好みです。ミステリではありませんが、ラストの切ない感じなど、味わい深い物語です。 ※表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.01.18 20:10:15
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