カテゴリ:本の感想(や・ら・わ行の作家)
横溝正史『迷路の花嫁』 ~角川文庫、1976年~ 金田一耕助シリーズの長編です。 …とはいっても、金田一さんは舞台の表にはあまり出てこず、かげから中心人物たちを見守る、といった立ち位置となっています。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ーーー 霊媒師として名高い宇賀神薬子が殺害された。薬子は、全身が傷だらけであり、現場には複数の猫がいた。また、数名の人にしかなつかない番犬も殺されていた。 現場の近くを通りかかった作家の松原浩三は、不審な女性を目撃する。女性を追ってみると、途中に血染めの手袋が落ちていた…。 松原浩三は血染めの手袋を隠し持ち、事件の捜査に少しずつ協力していく。 他方、有名な呉服店の主、滝川直衛の娘、恭子が結婚するというその日、式場に警官がやってくる。そして、恭子は重要な参考人であることを認め、結婚をしないと言い出すのだが…。 そうした中、松原浩三は、薬子とともにあくどいことをしてきた霊媒師、建部多門のまわりの人物たちに近づき、少しずつ彼らを助けていこうとする。 ーーー 傷だらけの被害者、ほえるはずの犬の死など、不可解状況についての真相も鮮やかながら、本作は謎解きよりも、人間模様に重点が置かれています。 主人公の松原さんが、多門のまわりの人々をいかに救っていくか、というドラマがとにかく面白いです。千代吉さん、その息子の蝶坊など、魅力的な登場人物がたくさんいます。そして、ラストでの感動もひとしおです。 『三つ首塔』も、金田一さんは少し後ろに引いた立ち位置でしたが、本書と『三つ首塔』は近い時期に刊行されたようで、なんとなく同系列の作品ですね。 謎解き重視では、「本陣殺人事件」や『女王蜂』あたりが好きですが、物語性では本書が大好きです。 何度目かの再読ですが、やっぱり楽しめました。 お気に入りの一冊です。 ※表紙画像は横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.03.01 21:03:55
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