カテゴリ:本の感想(な行の作家)
二階堂黎人『覇王の死 二階堂黎人の帰還』 ~講談社ノベルス、2012年~ 本書は、ラビリンスシリーズ最終巻。そして、『人狼城の恐怖』事件で行方不明となっていた二階堂蘭子が日本に帰還します。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 1975年。 貧困にあえぎ、死も頭をよぎっていた青木は、「貴方の不要な命を高価買い取りします」というビラを手にし、どうせ死ぬなら……とビラを配布していた法律事務所を訪れた。そこで彼が命じられるのは、石川県にある資産家の相続人になりすまし、もう一人の相続人との跡取り争いに勝利し、莫大な遺産を相続するとともに、そこに隠されているはずの徳川家の秘宝をも探し出すということだった。 一方その頃、「お城」の隣村では、奇怪な事件が多発していた。悪魔や怪物を見たという人々や、自身の家族が悪魔だったという人々が現れ、ついには多くの村人が疑心暗鬼になっていく。少年たちがその謎を解くべく動いていると、彼らはあまりにも無惨な死体を目撃することに…。 継承者選びの当日には、「お城」にラビリンスからの脅迫状が届けられ、ついには奇怪な密室殺人も発生する。 * 事件から約1年。『人狼城の恐怖』事件から3年の時を経て、二階堂蘭子が日本に帰還する。探偵をやめようという彼女だが、ラビリンス事件の話を聞き、石川県に向かうこととなる。 ――― アマゾンなどのレヴューを読んでから本書を読んでみたのですが(というよりも、だからこそというべきか)、思ったよりも楽しめました。 ニューホーリー村で起こる奇怪な現象、いくつかの密室殺人、奇怪な殺人現場の謎に、説明がつけられていく過程はやはり楽しいです。疑心暗鬼に陥っていく村人たちの描写も、雰囲気を盛り上げています。 以下、だいぶネタを割ってしまうので反転しておきます。 (ここから)蘭子さんの子どもについては、既にレヴューや、本書の次に刊行された短編集『ラン迷宮』を手に取っていたので知った状態で読みました。たしかに、義理の両親たちが手放しで喜ぶのには違和感……。一方、あの人との子どもだとしたら、後に蘭子自身が実は悪魔かラビリンスみたいな存在だったというオチもありえるのではというような、妙な空想もしてしまいました。もし子どもの父親にあの人を選んだのだとしたら、蘭子さんは、決して正義の味方というわけではなくなるような気がします。 一方、村人たちの疑心暗鬼の説明も興味深いのですが、ある作為と、不作為による病気との関連性はおそらく弱いのでは、と感じてしまいました。作為による原因意外に、あまりにも都合よくいろんな病気をもった方がいたことになってしまうので。理由はあの作為の分だけにした方が、もう少し説得的だったような気がしてしまいました。(ここまで) ともあれ、ラビリンスシリーズは本作で終わりとのことなので、今後は、ふつうの(?)不可思議な犯罪物語が描かれることとなるのでしょうか…。蘭子さんがこれを期に探偵をやめてしまっても、まだ発表されていない事件はあるはず…。というんで、今後の蘭子シリーズも楽しみです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.09.28 22:50:45
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