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ぬるま湯雑記帳

巻之七

女子寮騒動顛末 をんなのそのさわぎのあれこれ  
ふくすけ 巻之七 枯尾花怪七臭 かれおばなあやしのななくさ

  季節外れですが、寮七不思議なんぞ。

其ノ一 塔
 管理棟の屋上中央部、一際高くそびえる塔がある。その塔の首の脇にははしごがついていて、細長い首の上には人ひとり膝をかかえて入れそうなガラス張りの頭(部屋らしきもの)があった。入寮当初、門限を破った者はそこに閉じ込められ、食事だけは舎監がはしごをのぼって差し入れにくるのだと聞く。…大嘘。【水道塔】が正式名称らしい。…水道塔?それはナニモノ。謎は解決されぬまま。

其ノ二 浴当
 浴当とは浴室掃除当番のことで、順番で回ってくる場合と罰としてしなくちゃならない場合の二通りがある。後者の場合「ラメのタイツを履かされ、紫のレオタードを着せられて、『門限を破りました』とかいうたすきを掛けさせられてやらなきゃならない」とYさんに教えられる。…大嘘。そんなもんはなかった。私は半年くらい信じていて、親にまで「この寮はすごい」と話していた。

其ノ三 マツコ
 舎監の長を務めるマツコは寮内最高齢のおば(あ)ちゃんだった。「マツコはロシア人とのハーフで、それが証拠に目が青い」と耳にする。…大嘘。目は灰色、単に色白で小太りの正真正銘の日本人だった。ときどき「ごきげんよう」などと言い、育ちの良さをのぞかせた。

其ノ四 ダンサーズ
 別名【踊るお姉さん】。寮祭を中心に活動するが、その行動、神出鬼没にして予測不可能。夜中、洗面所で歯を磨いていると、いきなり覆面・ジャージのお姉さん達に襲われる。といってもお姉さん達は「ひえー」とか「きえー」とか言って通りすぎてゆくだけ。そこに居合わせた人達を驚かせることに命を賭ける。トイレに《ダンサーズ募集》のチラシが貼られるが正体は明かさない、詮索はしないが基本になっている。入団資格は中肉中背。あまりに特徴のある体格をしていると、ばれてしまうかららしい。私は一度もダンサーズに遭遇できなかった。それでも隣の棟から「きゃー」などという声、バタバタという音などが聞こえると、皆色めきたって「ダンサーズ出たね」「こっちにもこないかな」とドキドキしながら待ってたりした。可愛かったあの頃。

其ノ五 コタカ
 我が大学の創始者コタカなるものが、車椅子で寮内を散策(?)するとのこと。「勉強はやっていらっしゃる?」「ごきげんよう」など、声をかけるらしい。品の良い幽霊。

其ノ六 兵隊さん
 ベッドの脇に備え付けの引き出しが三段あって、その上は、人ひとりがなんとか寝そべることができるスペースがあった。気がつくと兵隊さんがそこにいて、よく寮生に添い寝をするらしい。軍の病院が近くにあったとかなかったとか、ありがちなパターンではある。それでも寮の部屋のなかには、魔除けの札が貼ってある【御札部屋(おふだべや)】もあり、それなりに怖かった。

其ノ七 雲固・運古・温孤
 退寮間際に起こった、最大にして最後のミステリーは実に品のないものだった。ブツが、しかもほぼ便器大の長さのものが、便器の真横に落ちていた。どこに足を置いて、どのように腰を動かせばかくの如くになるのか、こんなになるまで気がつかなかったのか、何がどうなっているんだ、ほんとに女の仕業なのか等々、話題を呼んだ。《出したものが片付けるべき》の貼り紙がされ、一週間ほど放置(?)されたが、結局心清き有志によって撤去されるに至った。兵隊さんのブツだったのかもしれない。

 …どこが七不思議じゃ。(続く)


1997年10月1日発行 佐々木ジャーナル第18号より(一部変更) 千曲川薫


『佐々木ジャーナル』掲載当時、いつもは冷静なランピツさんが、其ノ七に「一週間も放置するなよ」と思わずツッコミ文章を入れた、いわくつきの巻。女子寮ってこんなもんなんですよ皆さん。先日上京した際に、池袋で『女子寮』という風俗店を見つけました。いろいろ誤解してるよなあ。 



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