油脂(脂肪酸)脂肪酸の知識と小咄オイルの説明に「脂肪酸」って聞くけどいったい・・・?? ○脂肪酸 長鎖炭化水素の1価のカルボン酸。一般式 CnHmCOOH で表わせる。 グリセリンをエステル化して油脂を構成する。 脂質の構成成分。生体内ではエネルギー源にもなる。 炭素数や二重結合数によって様々呼び方がある。 ○飽和脂肪酸 分子内に二重結合、三重結合をもたない脂肪酸の総称。 分岐したもの、水酸基、シクロプロパン基、ケト基を含むものもある。 直鎖飽和脂肪酸の融点は炭素鎖が長くなるにつれて高くなり、室温では短鎖脂肪酸はさらさらした液状、中鎖(C5~10)は油状であり、C11以上の長鎖脂肪酸は固体である。 炭素数が奇数の飽和脂肪酸は炭素数が1少ない偶数鎖の飽和脂肪酸より融点が低い。分岐鎖は融点を低下させ、水酸基は上昇させる。短、中鎖のC4~12は主に乳脂に、中鎖のC10~C12は種子油、ヤシ油に見られる。動物脂質中に最もふつうにみられる飽和脂肪酸はパルミチン酸とステアリン酸である。 ○不飽和脂肪酸 …ということは分子内に二重または三重結合を持つ脂肪酸。 飽和してないため酸化安定性が飽和脂肪酸に比べよくない。 むずかしいですねー。 「酸化」に関して言えば、飽和脂肪酸が安定性がよく、不飽和脂肪酸が安定性がよくない、といえます。 よく見かける飽和脂肪酸は・・・ ○ミリスチン酸 テトラデカン酸 C14H28O2 炭素数14の飽和直鎖脂肪酸。融点53.9℃。 ニクズク属(Myristica)の脂肪から得られたのがこの名の由来。 ヤシ油に多く含まれる。乳脂に8~12%含まれるほか、あらゆる生物の脂質に少量成分として見出される。 ココナッツ油、パーム核油、ラード、バターに多い。 よく泡立つ。融点が高いため硬く溶け崩れの少ない石けんになる。 飽和脂肪酸なので酸化安定性がよい。 ○パルミチン酸 ヘキサデカン酸 C16H32O2 炭素数16の飽和直鎖脂肪酸。融点63.1℃。 ヤシ(Palm)油中から分離されたのが命名の由来。 ステアリン酸とともに生物界に最もふつうに見られる飽和脂肪酸。あらゆる生物が合成できるが、動物では特に肝、脂肪組織、乳腺などが高い合成酵素活性をもつ。 パーム油、みつろう、ココアバター、動物性油脂に多い。 非常に硬い石けんができる。泡立ちはよくない。 (ミリスチン酸から炭素が2増えただけなのに不思議ですね~) 酸化安定性がよい。 ○ステアリン酸 オクタデカン酸 C18H36O2 炭素数18の飽和直鎖脂肪酸。融点69.6℃。天然飽和脂肪酸として最も多く見出される成分。特に牛脂、人脂、毛髪脂、ココアバターに多く含まれる。 水に非常に溶けにくく硬い石けんになる。酸化安定性がよい。 飽和脂肪酸の中では入手しやすい。 ではでは不飽和脂肪酸はどうでしょう。 よく耳にするところでは ○オレイン酸 cis-9-オクタデセン酸 C18H34O2 炭素数18のシスモノエン脂肪酸。融点12~16℃。 オリーブ(Olea europaea)油から単離されたのが命名の由来 (こうすると覚えやすいですね~)。 ほとんどあらゆる生物に分布、特に植物油、動物油に多く含まれる。 石けんのオイルだとオリーブオイル、椿油に多い。ナッツ系オイルにも。 石けんにするととてもマイルドだが泡立ちがよくない。 ○リノール酸 9,12-オクタデカジエン酸 C18H32O2 9,12位にシス二重結合を持つ炭素数18のジエン脂肪酸。融点-5.2~-5.0℃。 植物乾性油に含まれるほか、微生物、動物組織にも見られるが、動物では12位の二重結合を導入できない為必須脂肪酸である。 オイルでは、ひまわり油、紅花油、グレープシード油、月見草油、コーン油などに多い。 肌に重要な脂肪酸。酸化が早い。 そこそこ泡立ちがよく、さっぱりしている。 ○α-リノレン酸 9,12,15-トリ不飽和脂肪酸 C17H29CO2H 分子内9,12,15位に3つ二重結合をもつ不飽和脂肪酸。分子量278.44、融点-11℃。 アマニ油など乾性油に含まれる。キャノーラ油、くるみ油、ククイナッツ油、月見草油、ローズヒップ油、馬油に多い。 皮膚の炎症を抑えたりする皮膚に重要な脂肪酸。 リノール酸よりさらに酸化が早い。石けんの保存と期限に要注意。 こちらはちょっと変わり種 ○リシノール酸 12-ヒドロキシ-9-オクタデセン酸 12位にd-水酸基、9位にシス二重結合をもつヒドロキシ直鎖モノエン脂肪酸。融点5.5℃。Ricinus属種子油に多く、たとえばひまし油中90%を占める。 粘性があり水分をひきつける性質。 ・ ・ ・ ・ 石けんの性質を決める重要な要素ですね。 肌にやさしくうるおって、泡立ちがよくて、硬くて・・・ って贅沢な望みをかなえる鍵は脂肪酸の性質が握っているのです。 |