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2010年10月28日
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カテゴリ:ESL for Adult Learners
The QCC Literacy Program (C Level) では、
アーネスト・ヘミングウェイの A Day's Wait
ラングストン・ヒューズの Thank You, Ma'm に続き
トシオ・モリの Japanese Hamlet という
Short Story (短編小説) を読みました。
1939年に発表された Japanese Hamlet は、
20th Century American Short Stories (Volume 2) に収録されています。

トシオ・モリは、アメリカで初めてその作品が出版された
日系アメリカ人の短編作家で、これは、
アジア系アメリカ人作家としても最初のことでした。
1890年代、トシオの父親が妻と2人の息子を日本に置いて
ハワイに出発、砂糖農園で働き始めます。
やがて父親はカリフォルニア州オークランドで苗木畑を設立、
1907年、アメリカの法改正により、母親が渡米、
1910年にトシオが生まれ、トシオの弟も生まれました。
その後、トシオの2人の兄たちもようやく渡米します。
長年、トシオは兄のことを父親だと思っていたそうで、
父親がどんなに忙しく働いていたかがよくわかります。

トシオは野球と読書の大好きな少年でしたが、
母親が Reading を減らし Writing を増やすようアドバイスすると、
トシオ自身も作家になりたいと悟ったのでした。
彼の短編小説集 Yokohama, California
1941年に出版が予定されていましたが、
真珠湾攻撃のため中止され、ようやく1949年に出版されました。
第二次世界大戦中、モリ一家は、ほかの日系アメリカ人と同様、
スパイ容疑で強制収容所に送られました。
アメリカ軍の志願兵となった日系アメリカ人はヨーロッパへ派遣され、
トシオの兄もイタリアで戦い、負傷したとのことで、
大戦に巻き込まれていく日系二世の苦悩を描いた
山崎豊子の小説『二つの祖国』を思い出させられます。

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トシオ・モリについては、ネット検索してもあまり情報がありません。
原作は、試験問題に使われている PDF ファイルが見つかりましたので、
興味のある方はこちらの4~6ページをお読みください。

--
物語の登場人物は、語り手とその友人 Tom Fukunaga で、
31歳のトムは高校1年のときから全寮制学校に住み、
庭師として週5ドルの収入を得ているだけです。
トムは『ウィリアム・シェイクスピア全集』を持って
語り手の家にやって来てはセリフを暗唱し、
「やっぱりハムレットが一番得意だ。
いつか一流のシェイクスピア俳優になる」と夢見ています。

が、トムはセリフを暗唱して語り手に聞かせるだけで
夢を実現させるための行動を起こす気配がありません。
俳優になる夢を捨てて定職に就くように言っても聞かないので、
すでに両親からは勘当され、何度も説得に訪れていたおじにも
ついには見放されてしまいます。
最初は喜んでトムの暗唱を聞いていた語り手も、やがて
トムの努力や時間を無駄にする手助けをしているのではないか、と悩み、
家にやって来るトムの存在を恐れ始めます。

ある夜、ついに語り手は「その本は君をダメにしてしまう。
しばらくやめたらどうだろうか」と切り出します。
トムは黙って語り手を不思議そうに見つめ、
何ページか暗唱したあと、いつもより早く帰って行きました。
そして、二度と語り手の家を訪れませんでした。
何年か過ぎたある日、語り手は、シェイクスピア全集に
没頭しているトムが車に乗っているのに遭遇します。
--

最初は、なんとも優柔不断なトムの言動にイライラさせられてしまい、
この作品を通してトシオは何を言いたかったのか量りかねました。
夢と現実とのギャップは、多くの小説のテーマですが、
夢を持ちながら現実に満足している (と言うより、現実を変えたくない)
青年像は、当時の日系アメリカ人コミュニティから見ても
予想を裏切る内容だったのではないかと思います。

おそらく、トシオ自身が作家になる夢を持ちながら、
作家の仕事で収入を得ることは難しいと知っていたため、
実際には父親の経営する苗木畑で働いて生計を立てることを
受け入れざるを得ない現実が背景にあったのではないでしょうか。

Japanese Hamlet の最後は以下のように締めくくられています。

He waved his hand politely again but did not get off,
and the car started up Broadway.

物語の舞台はサンフランシスコ郊外にある裕福な地域 Piedmont で、
Broadway というのはどこにでもある大通りの名前なのかもしれません。
が、ニューヨークのブロードウェーと言えば、アメリカ演劇界の中心、
「ついにトムがブロードウェーに向かって走り出した」と
トシオはほのめかしているのだ、と希望を持ちたいです。





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最終更新日  2010年10月29日 02時02分48秒
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