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ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

SS「十五夜にきみの寝顔。」

SS「十五夜にきみの寝顔。」

アヤがバイトで来るようになってから、ノブの仕事が分担されて楽になりました。
それまでは休日無しでこき使われていたのに、アヤの働きのおかげで、今日は兄の志信さん直々にバイトを休んでも構わないと言われました。
やった~!!学校終ったら遊びにいこうと思いましたが。なんと台風接近です。
警報が発令されたので、お昼を待たずに下校です。
「アヤ。バイト行く前に、俺の部屋でゲームでもしない?」
「ゲーム・・?」
付き合いの悪いアヤを、ようやく誘うチャンスと踏んだのです。
しかしアヤはゲームに興味がなさそうです。
「美容院に行こうかな。」
あ。携帯で予約を入れようとしていますよ。
ノブは大慌てです。
「たまには俺と遊ぼうよ、アヤ!」
「・・。」
アヤは、ノブと遊ぶことにも興味がなさそうですが・・。
ノブの熱烈アプローチに、乗っかりました。単なる気まぐれですね・・。

ようやく自分の部屋にアヤを連れ込めたノブは、ここぞとばかりにアヤにくっつきます。
「最近、全然俺と出かけてくれないなあ。」
「バイトしてるからね。」
アヤはあくびしていますよ。眠そうですね~。
「そのバイトだって、いつも顔を合わすのにそっけないもんなあ。」
「・・なにそれ。」
ノブの遠まわしな言い方に、いらっときたみたいです。
「何がいいたい。」
黒い瞳が睨んできましたよ。
「アヤ、俺のことどう思う?」
「は?」
「俺さあ、ずっとアヤが好きだったんだ。」
「前にも聞いた。」
かわいそうなノブ。全然、相手にされません。
「もっと仲良くしたいんだ!」
「・・近い!!離れろよノブ。」
アヤが怒鳴ったら、勢いよく部屋のドアが開きました。え?と振り向くと。

「煩い。・・新垣アヤはバイトだろう?さっさと準備しろ。」
これまた眠そうな志信さんが立っていました。
「ノックくらいしてよ。」
「煩いぞノブ。おまえは台風情報でも見てろ。」
シャツの袖のボタンがかけてありません。
アヤはノブの部屋から出ると、指して注意しました。
「だらしないです。」
「弟の部屋で奇声を上げたアヤに言われたくないな。」
志信さんは苦笑しながら、ボタンをかけました。
その仕草を横目で見ながら、
「よく聞こえましたね。」
それには応えずに、アヤの髪を撫でました。

「アヤ、今日は十五夜だよ。カーテンをしないで待っていなさい。」
志信さんが、らしくないロマンチックなことを言いました。しかし・・
「団子でも供えるんですか。」
アヤは真顔です。お月見イコールお団子ですか???
この発想はやはり子供です。
「違う。」
「じゃあ何ですか。」
志信さんはため息交じりです。
「アヤ。・・たまには口説かせろ。」
「先に寝ます。もう眠くて、もちません。」
「憎たらしい・・。」
でも志信さんも眠いのですが。
どちらが、どちらの寝顔を見ることになるのでしょう。

お月様だけが知っているのかもしれません。




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