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ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

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2.

「早いな。上出来だ」
バスルームから出てきたアヤをちらっと見た志信さん。
いつの間にかドルチェ&ガッバーナのスーツに着替えています。
「それに着替えなさい」
ベッドの上には、ディオールの3つボタンの黒いスーツが置かれてあります。
ご丁寧にロングノーズの靴まで。
「ベッドは物置き場ではないですよ」
「早くしろ」
まだ濡れたままのアヤの髪をタオルで包みます。
「・・着れません!」
「そのままでは濡れるだろうが。少しは拭いて来い」
頭をぐしゃぐしゃとタオルで擦られて、手にしたシャツを落とします。
「なんだ。着せて欲しいのか?」
「自分で着ます!」
腕を払うと、むうとむくれたまま新しいスーツに袖を通します。
「・・なにこれ」
「なんだ」
「少し大きい」
手首の隠れた袖を、志信さんに見せます。
「それくらいごまかせ」
「どうやって。大体、こんな上等なスーツ着てまで実家に行きたくない」
アヤの叫びはまるで無視。
「早く靴を履け」
これも上等な革靴です。
持つと重い。
「靴ずれしそう」
「手当てならしてやる。行くぞ」

いつもの車で行くのかと思いきや。
もっと・・・胴体の長い車が横付けされていました。
「リンカーンじゃん・・。こんな車に乗る人がいるんだ」
ドアを知らないひとが開けて待っています。
恐る恐るアヤが入ると・・中は革張り。
皮の匂いを消すためか、ご丁寧に薔薇の花束が置いてありました。
「なんだこれ!」
「薔薇だろう」
アヤの正面に志信さんが座ります。
あと4人は軽く乗れそうな広さです。
「そうじゃなくて!」
「待たせたな。出してくれ」

ふてくされるアヤをちらっと見ると
「アヤは名刺がないから。私の傍から離れるなよ」
「名刺?」
いよいよおかしなことを言い出しました。
「身内のものは口上を切るのが本来の挨拶だが、大叔父様はご高齢だからな。
耳が遠いから名刺で済んだのに、アヤの分が間に合わなかった」
「大叔父様は何をされているひとです?」
「トップだよ。もう隠居するんじゃないか?」

「トップって。もしかして親分さん?」

「下っ端はそう言うなあ」

すっとぼけているんでしょうか。
マルボロを取り出すと火をつけました。
「・・・なんだその顔。煙草は苦手だったか?」

「志信さん。やっぱり下ろしてください」

「何か勘違いしていないか?
何もアヤを怖いところに連れて行こうとはしていない。
大叔父様に挨拶だけだ。おとなしく座ってろ」
「挨拶だけなのに、こんないい服着るなんておかしくない?」
「アヤのいつもの格好では、組のものに示しがつかんだろう」

「組・・」
「極西会。瀧本の家が総元だ」

アヤは顔色が悪くなりました。
「吐きそう」
「何も食べていないのにか」
「無事に帰れるのかな」
「そのために私から離れるな、と言っているんだ」

「怖いところに行くんじゃないですか!!この嘘つき、もうイヤだ!」

両手で顔を覆うと、うなだれてしまいました。

「怖くない。私がいる」
アヤの膝を揺すると、腕を取ります。
「・・袖が長いな。みっともない」
「あなたがなんとか隠せっていったくせに」
「隠れていない」
「どうにもならないですよ!もう~~!」
暴れそうなアヤの腕をぐいっと引張りました。
「??」
よろけて前のめりの姿勢でぶつかるアヤを受け止めると
「いい匂いがする」
「・・あなたがバスタブに入れるから」
「抱きたい」
志信さんの一言で、体が反応しそう。
こんな敏感な体にされたことを今更自覚します。
「やめてください、・・今から親分さんに会うんでしょう?」

「ようやく承諾したか」

志信さんの微笑に、アヤは真っ赤。

「・・抱かせない!!もうあなたには・・」
アヤが言い終わらないうちに唇が塞いで来ました。
いつもよりゆっくりと・・熱い舌が動きます。
脱がされないシャツ。
首筋へのキスもおあずけですが、

「この続きがしたいから。私の傍から離れるなよ?」


→→興奮させておいてお預けですか。

  3話に続きます。



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