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ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

生意気で好み。1

「生意気で好み。」1  #志信さんサイド。 アヤとの出会いのお話です。


「大叔父に跡取りがいないからでしょうか?」
「ヤクザは親子で継ぐと決まってはいない。
組長が気に入ったものが組を継ぐのがしきたりだからな、たまたま気に入られたのだろうよ」
瀧本の家では深刻な表情をした両親がため息ばかりです。

そこにノブが帰宅しました。
「おなかすいたよ!おやつは?」

「・・ありませんよ、ノブ。あなたはこの淀んだ空気が読めませんか?」
お母さんが呆れています。

「ノブは呼ばれていなかったな?そういえば」
お父さんがソファーにもたれかかりました。
「会わせていても同じこと。志信さんに声がかかったのは間違いありませんよ。
うちの長男ですよ、私が精魂こめて育て上げた子供です。
それに目をつけた大叔父は、なかなかの男とお見受けしましたが・・」
お母さんは志信さんがかなりの自慢の息子のようです。

「大叔父って?ヤクザの??俺も一度、会いたいな!」

「根性を叩きなおしてもらいましょうかね」
お母さんは背中に重いものでも背負っているのでしょうか?
かなりのへこみ方です。

「なんだよ~。おやつが無いなら買いに行こうっと」
ノブがバタバタと出て行きました。

「ノブもおかしなことを考えているようですがね、あなた。
あの子の机の上やべッドサイドを見たことがありますか?
黒い髪の男の子の写真が飾ってありましたよ・・」
ガクガク震えるお母さん。

「アイドルかい?」
「同級生でしょうよ!
なんですか・・女の子のように可愛い子ですが・・・・・男って!」
「瀧本の家は呪われているのかね。志信がどうするかを聞きたいところだが・・」

「ヤクザの親分を引き受けるって、あの子が言いますかしら?
そんな子に育てたつもりはございませんよ」
「いや・・・・この瀧本の家は大叔父あってだからな。
義理を感じたのなら、あいつは引き受けるさ。
私達も大叔父には世話になっているし。
さて、当の本人は・・」



塾のお休みの日でした。
志信さんは暇つぶしにネットであやしげな所に迷い込みました。
相手を探す出会いの場、チャットです。ただしゲイ専門。
「ふざけているな」
出てくる男はいかにもサクラっぽい。場慣れした感じがイライラします。
たまに混じるおじさん風なひとを見かけると、さらに殴りたい気分になります。
数分後、ふと、手が止まりました。

顔出しNGの子です。
年齢を聞いたら20歳だといいますが。

服装からして、弟のノブと同じくらいでしょうか。
なんとなく・・繋ぎ止めたい気持になりました。
声が、好みだったのです。

<俺のカンは当たるからな>

画面の向こうの男の子の指には若者に人気のブランドの指輪がありました。
「会うのもセックスもお断りしているのです」
客に対してはっきり断ってくる生意気さが面白い。
「食事だけならいいだろう?で、いくら欲しい?」

<間違いないだろう>

途惑う男の子に一方的に待ち合わせ場所を指定しました。
「駅前に行け。目印はセンチュリーだ」


センチュリーに乗り込むと、空いている助手席をちらっと眺めます。
あの子の顔を見たい。
そして必ずここに座らせる。


 

→→さあさあ、アヤに会いに行け。出会いはここからのお話は2話に続きます。
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