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ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

2.はつしも。

2.はつしも。

「おはよう。ひかりくん。毎朝ごめんなさいねー。小町が遅くて!」
「いいえ。遅刻しないくらいまで待ちますよ。」
毎朝。小町を呼びに行って。小町と一緒に登校する。
これは小学校のときから変わらない。
そして、待たされるのも変わらない。
「小町!まーだ御飯食べてるの?いい加減になさいな。早く!ひかりくん待ってるわよ!」
おばさんの声がヒートアップしても、一向に返事が返ってこない。
いつも危ない綱渡り。
今日は・・遅刻かも。

「おはよ。ひかり。」
小町の・けろっとした声がした。待たせたくせに。
長すぎる前髪は毛束をつくり。肩に着かない程度のウエーブかかったボブ。
横に軽めにシャギーを入れてるけど。まるっきり女の子だよ。
ただでさえ、細身だし。肌の色が米みたいに白くて、大きな二重の目が髪の色と同じで黒い。
唇が乾燥して剥けるからって。リップクリームぬるから・・つやつやで。
毎日、顔をみているのに。ついつい・・目を奪われるんだ。
「・・おはよ。今日も急ぐぞ。」
「眠いね。」
小町は、ぼけっとしている。いつものことだ。朝は本当に弱いんだ。
そのくせ朝ごはんを抜かない。たべれるんだからすごい。
「御飯たべたんだろう?起きろよ。」
「んー!今日も。学校かー。」
猫みたいに伸びをしている。
「早く後ろに乗れよ。本当に遅刻だぞ!」
「はいはい。」
俺が自転車をこぐ。
後ろに小町が乗る。
ペダルは重いし、坂道は辛いけど、この役目を誰かに譲る気は全くない。
「ちゃんとつかまってるのか?落ちるなよ!」
「大丈夫だって。」
小町は俺にしがみつかない。
後ろ手で荷台をつかんでいるらしい。
それが・・寂しいといえば、寂しいんだけど。

「うわっ!!」
急に猫が飛び出してきて。ブレーキを思いっきりかけた。
「あっ!」
背中に何かがぶつかってきて、俺の胸の辺りに両手がしがみついてきた。
・・小町だ。
「ごめん小町。大丈夫か?」
「びっくりしたー・・。」
はあ・・と息が背中にかかった。
その感じにどきどきしながらも。
「さ。行くぞ!」
「ひかり。ごめん。背中に ちゅーしちゃった。」
?!
「リップがついちゃったー。」
そんな女の子みたいなことを言うんじゃないよ・・。
「も。もういいから!行くぞ!遅刻しちゃうよ!」
そのまま・小町がそのまま俺にしがみついていてくれた・・。
多分。急ブレーキが怖いからだと思うけど。


なんとか今日もぎりぎりだけど間にあった。
学校につくといつも妙な感じ。
この・・真っ黒い制服のせいだ。
噂では、うちの学校はカンコンソウサイと呼ばれているらしい。
確かに。だ。
シャツは白だけどノーネクタイだから、まだマシか。
これで共学だったら、女子はどうなんだろうと思う。
そう。うちは男子校・・。

俺としては、小町は興味の目で見られてしまうから心配なんだ。
なのにこいつは、シャツのボタンを第三まで閉めない。
かーと開いた肌の白さ。華奢な鎖骨が見えて、本当にまずいんだ。
人の目だけじゃない。
俺だって・・・・・
   本当に毎日、こらえているから大変なんだぞ。小町!
そう言えたら楽だけど。
そう言ったら小町ににらまれそうだし。

この毎日の葛藤が、小町にわかる日がくるんだろうか?


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