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仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

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2006.04.02
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カテゴリ:仙台
仙台藩は大藩で、小大名のような大家臣をいくつも抱えていた。この体質から、藩論統一に難しさもあり、伊達騒動が生じ、維新期には佐幕か勤王か日和見的態度を示した。奥羽越列藩同盟の盟主となるも、主体性はなかった。

 この幕末の「大藩」仙台藩の空虚なる民情を、見事に見抜いたのが、維新の原動力となった薩摩藩士の肝付兼武だ。
 彼は、薩摩藩士で安政年間に東北を歴訪し、見聞をもとに『東北風談』(風譚とする写本もあり)を著し、東北諸藩の藩政と海防について的確な批評をした。ただ、彼のことは、これ以上ほとんどわかっていないのだそうだ。
 なお、長州藩士の吉田松陰も嘉永年間に、新日本の兵学の方針を立てるべく、東北を歴訪し、『東北遊日記』を著した。仙台では藩校養賢堂、医学館などを訪れている。

 さて、兼武は仙台について、広い平野に水田が広がり、諸藩に冠たる米の大産地だが、米以外にみるべき産物がなく、およそ衣服器材はみな他国に求めている、と産業の実情を述べている。
 これ自体、現在にも通じる宮城の産業構造を的確に捉えているが、もっとビックリするのは、次の民情の批評だ。

 而大臣の人小外城を構えて、人々自ら高とし、主君の為に主宰するもの無きように見えたり
 故に国政弛廃してしまらなるざり。
 然も士民共に狡猾、自ら便宜を択(えら)んで労を他に施すの風あり。
 人々怠懈を以て得(とく)たりとす。是其貧なる所以なり。


もう少し現代語的に表現すれば、
 ○ 一門の人は要害に住み尊大だが主君のため自らとりまとめようとはしない
 ○ だから、国全体、下の者も気がゆるんで、締まりがない。
 ○ 武士も民も悪賢くて、楽や得を選択し、仕事は人におしつける。
 ○ 何もしない、積極的に動かないのを、ヨシとする。
 ○ だから、貧困を脱することもできないのだ。

ということだろう(この部分、佐々先生の説明を編集長多少アレンジ)。

 これは、現在の県民性にも通じるのではないか。的確であり、ショックでもある。

 果たして、兼武の表現通り、戊辰戦争では仙台藩は優柔不断に終始した。ペリー来航後に幕府が各藩に意見を求めた際、苦しい藩財政や凶作もあり、仙台藩は藩内に尊王攘夷派もあったが、積極的に政局に関与できるどころではなかった。

 肝心の海防に関しては、「海防の事は誰も主になりて唱える者なし」。「天下戦争の勢いに至れば、我が輩は直ちに仙台を襲はん」と米沢人から聞いた、とも記している。

 そして、兼武の次の表現だ。編集長の胸の奥にグサリと来る。

 嗚呼余輩をして仙台を治めしめば国を富ますこと3年の内にあらん。(略)惜しい哉、富饒の地に居て常に貧に苦しむこと。

 五代吉村の米価高騰の一時期を除いて、仙台藩は、政宗以来の借金体質。実高百万石とは言え、地方知行制のため藩財政は政宗以来の借金体質。しかし、豊かな土地と気高い大藩意識が、逆に、進取の改革の気風や、ライバルがしのぎを削るような競争の気質、また米以外の新たな殖産の意欲を生まなかった、とも言えるだろう。
 兼武が、「3年で国を富ます」という具体的戦略はわからないが、たしかに他藩に見るようないわゆる産業戦略は薄かった。上記のように兼武も米以外の産物がないと指摘したが、林子平も「土産物や細工物も大したものが無い」旨を記している。仙台平や埋もれ木細工などは有名だったようだが、他に商業作物もなし。紅花生産もあったが、田畑がおろそかになると藩が禁令を出したという。商品作物、手工業、土産物、何にしても、農村にまで裾野の広がる産業の展開が他に比べて薄かったといえるだろう。
 以前「仙台名物は大した物がない」とか言って県議会で陳謝した知事がいたが、本人の認識はともかく、客観的には正しい指摘といえるのかも知れない。
 思い出したが、この知事も、3年で宮城の産業再生を果たすとの「戦略」を打ち出した。しかしその内容は、給料(昔なら武士俸禄)の削減だけが斬新で、中身は人任せ、民心もついてこない、何のための改革だったのだろうか。兼武はどう見るだろうか。

 兼武以来の150年間、産業に関する仙台・宮城の基本戦略は、いかがだったのだろうか。この点は、別の機会に譲る。

(参考:佐々久編『郷土史事典宮城県』、昌平社出版、1977年 ほか)

■仙台・宮城の県民性に関して過去の日記
 2006年2月17日の日記「仙台文化を理論的に解明?」が仙台文化について編集長の考えの一つの整理。←よろしければ読んでください。また押し売りですが。

 もうちょっと、歴史や他地域の勉強をして、県民性の整理をしてみたいです。単なる性格比較ではなく、考え方や気質が産業や教育の重要な判断にどう表れたか、今後の政策判断の環境をどうみるか、結構重要に思うからです。県民性というより、地政学的状況、産業構成、歴史などをふまえたいわばカントリースタディです。言葉はどうでもいいのですが。

 画像は、最近よく登場させている我が家の庭の巣箱。土曜日(1日)天気が良かったので、家の脇の畑(猫の額ですが)から撮影したのが、画像です。見えにくいですが真ん中やや右上に、巣箱。その奥は保育所。これも日記によく登場しましたが、今月からは、利用者ではなく、普通のお隣さんになりました。





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最終更新日  2006.04.02 05:32:42
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