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山形県の左沢(大江町)は難読地名だが、鉄道の路線名でもあり、難読ゆえに逆に有名なのではないだろうか。
この不思議な地名について詳しく論じている本があった。 ■小沢康甫『暮らしのなかの左右学』東京堂出版、2009年 柳田国男は昭和11年『地名の研究』で、アテは陰地、ラは名詞を確定する語尾であり、他県でもアテラ地名として、阿寺沢、安寺沢などを挙げている。 昭和26年東條操編『全国方言辞典』では、アテの第一義を樹木の日が当たらない側として、東京都西多摩郡檜原、和歌山県日高郡、徳島県祖谷でその意味で使うという。 ではなぜ「左」の字を当てるのか。丹羽基二『日本の苗字読み解き事典』によると、木こりはアテ(日陰に当たる木の部分)にまず斧を入れ、日向のほうから鋸で切っていく。このため、木こりから見るとアテは必ず左側になる、という。 山形県大江町の左沢に関しては、この日陰由来説以外にも、諸説がある。 1 最上川上流から見て右(こちら)に対して、左(あちら)の沢 2 寒河江城主大江氏が長岡山から西方の山谷を指して、「あちの沢」と呼んだので左の字を当てた 3 アイヌ語のアッチャケ(対岸)で、最上川の対岸の位置 ところで、左沢の地名は山形県内に10か所あるという(山中襄太)。左岸の左沢に対して、右岸の右沢は、コチラサワ、カテラサワと読むそうだ。しかし、大江町史編さん事務局によると、最上川の右岸にも左沢はみられ(山形市青野左沢、尾花沢市玉野左沢)、反対に左岸でも右沢がある(朝日町大谷右沢(かてらさわ)など)。とすると最上川の流れの視点では説明しきれない。大江町の左沢は南面で日当たりも良く、日陰の意味も当てはまらない。ヒバ(アスナロ)をアテと呼ぶ地方があるので、アテの育つ沢という見方もある、ということだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.12.20 07:39:29
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