ラーメン 杏美 ~新潮流的竹岡系~
ダイニングバー「杏美」が、いつの間にか昼をやるようになっていた。かなり変則的で、月、水、木、土というみごとなまでの飛び石営業。出すものもラーメンのみという(お客に媚びない)徹底した姿勢でのぞんでいる。この手の店なので、入るのにすこし勇気がいるのはご愛嬌としておこう。小ざっぱりとしたミニ割烹的スタンドバーで、明るい陽の下にさらされるのは、どうころんでも苦手だ。ラーメンのバリエーションは極めてすくなく、味も醤油一本のみ。ラーメン、チャーシューメン、メンマラーメン、チャーシューメンマラーメンしか揃えてない。基本のラーメンをたのんだ。それほど期待せずに食したのだが、これが大まちがい。本当にすばらしい逸品だった。やや大きめの丼に盛られたそれは、スープがたっぷり注がれた余裕ある堂々とした面構え。貧相・チープの対極に位置する「どっしりした感じ」が何とも食欲をそそる。濃い目の醤油スープに、みじん切りの玉ねぎが漂泊しているのだから「竹岡系」の一種といっていいだろう。あとの具は、海苔、チャーシュー、メンマと基本の基本どころが居ならぶ。間に合わせで出している感覚がどこにもない。ていねいの限りを尽くしている。食べているあいだじゅうずっと「洗練」という言葉が思い浮かぶ。スープは「竹岡系」の一派なのだから、推して知るべし。しかし普通それでイメージする、派手で猛烈な「しょっぱさ」は影も形もなくなっている。最後の一滴まで、まろやかで、程よい醤油感に満ちている。これは、現在考えうる限り、もっとも洗練された竹岡系であると断言することできる。ていねい煮込まれたチャーシューは、いくつかの小片の仕様ながら、このラーメンの最重要パーツとしてスマートに君臨していた。噛むと素直に噛み切れて、まろやかスープの醤油感を濃縮・凝縮した、得も言われぬ味わいが広がる。ラーメンに配された焼豚というものがどれだけ美味しいものか誇示する味わいが、口の中いっぱいに広がっていく。噛めば噛むほど美しい。メンマは極細に調製され、よく知らずに食べた最初はえのき茸の片割かと思ったくらい。慣れるとこれも、このラーメンを形づくるすばらしき要素だと思い至る。「間に合わせ」「片手間」という雰囲気がどこにもない。この店のプライドを賭けた、どこまでも「本気」の一品が、安価にいただける。こうしてみると、飛び石でしか出さない理由がおのずと理解できるだろう。この逸品が「竹岡系」の新たなる潮流、新たなる可能性として、もっと幅広く認知されることを私は1ファンとして希うばかりである。ダイニングバー「杏美」(あずみ)住 所: 市原市姉崎704アクセス:潮見通り ホテルタカザワ入口 P(有り)電話番号:0436-41-4469営業時間:11:00-14:00/17:00-LAST/定 休:ランチの定休日は火、金、日/客 席:カウンター9席/テーブル2卓/利用種別:個人向き/少人数向き/仲間向き/メニュー:【昼】 ラーメン550/メンマラーメン600/チャーシュー麺700/ メンマチャーシュー麺750/大盛りはプラス100/ チャーシューとメンマ盛700/メンマ盛300/ 【サラダ】 トマトとオニオン500/ベーコンサラダ680/ オニオンスライス450/焼豚と水菜650/ 【単品】 ピザ700/モッツアレラとトマトの生ハム包み800/ ラザニア800/ポテトのチーズ焼700/チーズ唐揚650/ 【飲物】 ビール600/梅割400/生ジュース600/ジュース200/評 価:☆☆☆☆☆ (味4.5/量3.5/サービス4/雰囲気4.5/CP4/駐車場3)