可愛いに間に合わない(ファッションと猫と通販な日々)

↓前回です♪
第八十八段　～『本当？それは明日の朝？』シアンは全身で輝いた。～　

★☆★☆
第八十九段

少し前まで激昂して手がつけられなかった男は、

今はジョンの胸で温まったバターのように正体がない。

そして美味そうだ。

くるくるとめまぐるしく変わる彼の機嫌。

扱いづらい気分障害のドール。

シアンは怒り狂うと竜巻のようで

何が飛んでくるかわからない。

俺は振り回されて吸い上げられ

情けなくも結局この男の手に落ちてしまった。

ジョンはシアンに気取られないように、そっと溜息をついた。

そして、ジョンの胸に頬を寄せ目を閉じている彼をしみじみと眺めた。

まだ男になりきっていない、半分は少女の男。

この能力者(ネクスト)は、今夜のこの抱擁を予見したのだろうか？

この出来事は、昼間の冒険劇と同じく、彼には何度目かの

経験なのだろうか？

未来を知っているというのはどんな気分なものなのだろう？


『殿下。

どうしてその顔を？』

ふと思い出したホワイトのジョークを

問いかけた。

シアンは微笑みながら目を開いてジョンの胸から顔を離すと

彼を見上げるようにし優しい声で言った。。

『この顔、好き？』

と反対に訊ねられた。

『どうでしょう。』ジョンは首をすくめた。考えたことも無い。

シアンを思う時、どの顔で思い出しているだろうか、、

長い間ジョンにとって、シアンは最初に出会った時の泣きべそ男だ。


『僕は、君が殺されるヴィジョンを見た時に、同時に君が

この顔の男とキスをしているシーンも見た。

君が死ぬこともショックだったけど

君が僕以外の人間とのキスに夢中になっているシーンにも

同じくらいショックを受けた。

しかもその人間はなんと、僕の傍にいつも居る双子だ。

こいつらの内のいったいどっちなんだ？って。』


『へえ。』

ジョンは少し眠くなってきた。

シアンといるとなんだか心が落ち着く。

彼の話し声は好きだ。

まるで子守唄のように心が休まる。

子守唄だって？そんな唄、聞いたことも無い。

ああ、なにもかもがどうでもよくなる。

世の中がどうなっていようと関係ない、というか考えられもしない。

純度の高いドラッグのようだ。

ストレートで強烈。


『それでね、決めたんだ。』シアンは話し続けた。

『この顔にしようって。

そしてね、火星に着いたら誰よりも早く君とキスしようってさ。

そしたらヴィジョンの中の男は僕ってことになる。』

シアンは唇の両端をきゅーっと上げて悪戯っぽく笑った。

天使のようだ。


この天使はよくしゃべる。ご機嫌だ。

相変わらず熱っぽいのに。

彼のこの上機嫌のためなら悪魔に魂を捧げても構わない、、

かもしれない。

この声をずっと聞いていたい。

さっきはあんなに怒って、怒鳴って、泣いて。

ただ俺を欲しかっただけなんだな。

馬鹿なシアン。

何処か足りないんじゃないのか？


『ん？僕のこと馬鹿って言った？』

シアンもねむそうだ。


『いいえ。殿下は天才ですよ。

あんなタイルを発明するなんて。』


『ああ、あれ？歯ブラシの方がもっと凄いよ。』


心からウンザリした。朝一番から緊張を強いられる。。


やがて頭の中を白い霧が立ち込めてきて

そのミルクとともに意識が深い谷間にすべり落ちて行く。

ふたり抱きあって、何処までも何処までも

深く深く霧のベールの落ち込む先へと。

馴染みの世界だ。ふたりの抱擁。

死のような静寂。

ここを知っている。俺たちの行き着く場所。



。。


。。。



『な。。



ぜ。。』



ん？何？



何か聴こえる。。


。。



『なぜ、


。。



うそを。。。』



シアンの声だ。



『どうしてあんな嘘をついたんだ？』

シアンの辺りを憚るような忍び声。


シアン？どうした？何を言っているんだ？


その時、別の声がした。『なんのことかな？』

その声は。。

その冷やかな声には辺りを気遣う様子はまるでなかった。





つづく





溶けたバター(笑)　美味（うま）そう♪


↓次回です♪
第九十段　～バターケーキのようなシアンを胸に抱いていた。～





ウィリアム・フォン、馮紹峰、フォン・シャオフォン、ペン・シャオペン　William Feng 以上全部同じ人（笑）

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表ってことでヨロシク♪


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↑ここから目的の記事を探して頂く方が早いかもしれない？
もしもお気ににして頂けるならば、その時もここのほうが、、