カテゴリ:◆映画・TV・華流・韓流・ショービズ
↓前回
第九十一段 ~『女だね』ホワイトが言った。 ★☆★☆ 危険な薬を使っている。 注意したかったが、彼がそうせずにはいられない事情を知っていた。 部下の過去は全て把握している。 入隊時の洗脳教育中に自白剤でしゃべらされたことも含めた全てだ。 この通過儀礼なしには入隊できない。軍人の地位を獲得するためには どのような高位の者の子息であろうと選択の余地はないのだ。 彼らがプライバシーを失っていることを承知しているかどうかは 別として そのことについては特殊部隊のキャプテンとしては当たり前の 権限であり 義務だから特に後ろめたさは無い。 ミックは男であることが必要なのだ。心の平安のために。 服用量が増えてきて、最近では、数時間置きにピルを 口にしていたのも気が付いていた。 昏睡状態が長く続いて、彼は女の身体に戻りかけているのだろう。 あの日、漂流船から救出した時、彼は少女だった。 男物の軍服の中で、絶食が続いてやせ細った身体が泳いでいた。 入院させて、次に会った時には男の身体になっていた。 ジョンは何も訊ねずに、そのまま自分の部隊に受け入れた。 珍しいことではない。 軍人の中には多い。 男であるほうが色々な点において有益なのだ。 『そうか、、、』 シアンがそっと呟いた。 ある程度の事情を理解したようだった。そして、 あの馬鹿王子がたった今、何を考えているのかが分かる気がして、 ジョンはその考えには絶対に反対するぞ、と強く心に誓った。 思いつきや遊び半分で使って良いものではない。 いつ何時廃人になるか分からない。 一度の服用でそうなる人間もいる。 代償が大き過ぎるのだ。 ミックも今が止め時だ。 『キャプテン!』 その時ミックの切実さを帯びた声が響いた。 盗み聞きをとがめられるような気がして一瞬ジョンの胃は収縮した 次に返事をすべきだと思ったが声が出せなかった。 『キャプテン』 次の呼び掛けの時ジョンは ミックが自分に近づきつつあることを感じた。 ジョンは応えたかった。 何としてでも応えてやりたかった。 必死になって、水底から這い上がって、ミックの呼び掛けに 返事をしてやりたかった。 だが、抱いているシアンがジョンを掴んで重石になっていた。 鉛のように重く冷たい男。 『キャプテン』 最後に呼ばれた時には、目をうっすら開くことができて、 あまりに近い場所にミックの顔があったので、ぎょっとなった。 彼はジョンの両肩をゆすっていた。 腕の確かな感覚が戻って来て、抱いていたはずの人間は もう居なかった。 初めからいなかったのだろうかと思えるほど、 スッポリと気配も感触も抜けたように消えていた。 『ミック』 ジョンは覚醒してきて、かすれた声で彼の名を呼んだ。 『大丈夫か?ミック。目が覚めたんだな?』 頭がスムーズに働かない。 もっと意味のあることを言ってやりたかったが それ以上の言葉を思いつくことはできなかった。 ミックはその言葉を聴き終わらないうちにジョンの背中に手を回すと 抱え起こし、身体に力が入らずふらふらしているジョンを抱いたまま、 じっと、真っ直ぐに彼の目を見つめた。 その短い間でさえミックの腕の中で、尋常でない睡魔に勝てず、 あやうくジョンは目を回しそうになった。 ジュースに何か入れられていたかも知れない。 しかし、同じピッチャーのものをホワイトも飲んでいたのだ。 まだ醒めきっていない頼りない脳味噌で、 ジョンはあれこれ推理しようとして、 また目が廻った。ミックが再び彼の身体をゆすったのだ。 『キャプテン。俺と一緒に行きましょう』 強い眼差しがジョンの目を鋭く刺すように捉えた。 彼はたじろぎながら首を傾げた。 どうしたんだ?どこへ行くんだ? 彼はそう言いかけたが、言葉がすんなりと口から出てこなかった。 ミックの顔つきが少し前とは違っていた。 昔を思い出した。 つづく つづきの九十三段↓ 第九十三段 ~『俺かシアンか、どちらかを選べと言ってるんだ』~ 前回や前々回 ↓こちらからどうぞ♪ 『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表 ウィリアム・フォン、馮紹峰、フォン・シャオフォン、ペン・シャオペン William Feng 以上全部同じ人(笑) 『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ早見表ってことでヨロシク♪ 『可愛いに間に合わない』新着記事一覧 ↑ここから目的の記事を探して頂く方が早いかもしれない? もしもお気ににして頂けるならば、その時もここのほうが、、 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.11.10 23:11:15
[◆映画・TV・華流・韓流・ショービズ] カテゴリの最新記事
|
|