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「トゥモロー・ワールド」(原題: Children of Men)は、2006年公開のイギリス、アメリカ合作の近未来SFサスペンス映画です。英国の女流ミステリ作家P・D・ジェイムズの「人類の子供たち」を映画化したもので、子供が誕生しなくなった近未来の地球を舞台に、人類の未来を左右する一人の少女を巡る攻防に巻き込まれた主人公をスリリングに描いています。
「トゥモロー・ワールド」のDVD(楽天市場) 監督: アルフォンソ・キュアロン 脚本: アルフォンソ・キュアロン ティモシー・J・セクストン 原作: P・D・ジェイムズ 「人類の子供たち」 撮影: エマニュエル・ルベツキ 出演: クライヴ・オーウェン(セオ・ファロン) ジュリアン・ムーア(ジュリアン・テイラー) マイケル・ケイン(ジャスパー・パルマー) ほか 人類に最後の子供が誕生してから18年が経過した西暦2027年。子孫を生み出す事の出来なくなった人類は希望を失い、世界には暴力と無秩序が拡がっていました。世界の国々が内戦やテロによって壊滅する中、大量の不法移民がイギリスに押し寄せ、政府は国境を封鎖、徹底的に不法入国者を取締り、辛うじて治安を維持していました。アルゼンチンで世界最年少の青年が刺殺されて絶望に包まれた日、ロンドン市街地で爆破テロが発生、英国エネルギー省に勤めるセオ(クライヴ・オーウェン)はすんでのところで難をまぬがれますが、翌朝、セオは出勤途中に元妻ジュリアン(ジュリアン・ムーア)が率いる反政府組織 Fish に拉致されます。ジュリアンの目的は、ある移民の少女を「ヒューマン・プロジェクト」という組織に引き渡す為に必要な通行証を入手することでした。従兄弟の政府高官から通行証を手に入れたセオは、ジュリアンと共に乗り込んだ乗用車で、移民の黒人女性キーと引き合わされます。検問所に向かう途中、セオたちが乗った車は暴徒の襲撃にあい、ジュリアンが撃たれて絶命します。組織のアジトに逃げ込んだセオに、キーは妊娠しており、間もなく出産を迎えると告白、セオは彼女を連れ、命がけの逃避行を開始します・・・。 生々しい夢を見て目が覚め、何故、そんな夢を見たのか考える、アルフォンソ・キュアロン監督の「トゥモロー・ワールド」は、まさにそんな感覚に陥る映画です。何故、子供が生まれなくなったのかその理由が語られることもなく、戦いに明け暮れる絶望に満ちた世界が生々しく描かれています。そこには、ヒロイズムもなければ、感動的なヒューマニズムや、社会的、政治的な主張もありません。子供の生まれない世界、希望の持てない世界が、どんと投げ出されます。 アルフォンソ・キュアロン監督と同じメキシコ出身のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督は、映画「バベル」で「生死にかかわる問題でつながっているにも関わらず、言葉や文化や国籍などの違いによりコミュニケーションがままならない」9.11以降の世界を描き、おぼろげな希望を子供達に託しています。これに対して、アルフォンソ・キュアロン監督は、逆に子供の生まれない世界を描くことにより、希望の持てない世界を徹底して描いています。 先進国に少子化の傾向があるとは言え、「人類に子供が生まれない」という極端な設定の「トゥモロー・ワールド」がこれほどの現実感を持って観客に迫ってくるのは、何よりもそこに描かれている希望のない世界が現実的であるからに他なりません。子供は希望の象徴であり、戦闘中に子供の存在に気づいた兵士が、銃撃を中止するシーンは感動的です。身を挺して母子を守ったテオのボートに、ヒューマン・プロジェクトの「トゥモロー号」が近づき、映画は未来に対しておぼろげな希望をつなぎます。 アルフォンソ・キュアロン監督は、この映画のヴィジョンを妥協してしまうことを恐れ、原作を読んでいません。また、彼はエンド・クレジットが流れて終わる映画ではなく、エンド・クレジットが真の始まりであるような映画を作りたかったとも語っています。9.11以降の世界をオーバラップさせるかのように、将来に対して希望を見いだせない世界を描く中で、未来への希望をどう紡いでいくのか、エンド・クレジットは未来という映画という映画のオープニングとなっています。 ニュースで世界最年少の青年がアルゼンチンで刺殺されたニュースが流れ、店を出たセオが爆弾テロに出くわすシーンから、映画は始まります。 オープニング〜爆破テロシーン〜「トゥモロー・ワールド」 セオは従兄弟の政府高官から黒人女性キーを「ヒューマン・プロジェクト」に引き渡す為に必要な通行証を入手、ジュリアン、キーらと車で検問所に向かう途中に襲撃にあい、ジュリアンが撃たれて絶命します。 乗用車襲撃シーン〜「トゥモロー・ワールド」 「ヒューマン・プロジェクト」への手引きをしたジャスパー(マイケル・ケイン)も殺害されます。 ジャスパーの死〜「トゥモロー・ワールド」 命がけの逃避行をするセオとキー、途中で生まれた子供は、戦いに巻き込まれます。 戦闘シーン〜「トゥモロー・ワールド」 この戦闘中に子供の存在に気づいた兵士は、銃撃を止めます。 撃ち方やめ!〜「トゥモロー・ワールド」 戦いに明け暮れる絶望に満ちた世界に一筋の明かりを見るような、感動的なシーンです。 「トゥモロー・ワールド」は戦闘シーンでの長回しを始め、技巧を駆使した臨場感ある映像表現が高く評価され、第79回アカデミー賞では脚色賞、撮影賞、編集賞にノミネートされました。アルフォンソ・キュアロンはメキシコ出身の映画監督で、哲学と映画を学んだ大学時代に、以降全作品でタッグを組む撮影監督エマニュエル・ルベツキと出会います。2001年公開の「天国の口、終りの楽園。」でアカデミー脚本賞にノミネートされ、国際的な評価を得ます。2004年公開の「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」の監督に抜擢され、アカデミー視覚効果賞にノミネートされます。2013年公開の「ゼロ・グラビティ」では、アカデミー賞10部門にノミネートされ、監督賞をはじめ、撮影賞、視覚効果賞など最多7部門を受賞しています。 「トゥモロー・ワールド」は現実感が大きなポイントとなっていますが、リアルな臨場感を生み出している要素のひとつが「長回し」です。次の4シーンはいずれも1カットの長回しに見えるよう編集されています。 ・オープニングの爆破テロシーン(約51秒) ・乗用車の襲撃シーン(約4分07秒) ・出産シーン(約3分19秒) ・終盤の戦闘シーン(約6分16秒) 最近、「長回し」そのものが一人歩きし、時間の長さが注目される風潮もありますが、映画全編を一本の長回しで実現するという「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」の戦略的な試みを除けば、「長回し」は他の技法と同様、その効果において評価されるべきものです。「トゥモロー・ワールド」の長回しはその長さではなく(決して短くはない)、ドキュメンタリーのような現実感を実現する手段のひとつとして、この高度な技法が効果的に用いられていることを評価すべきでしょう。極論すれば、観客が長回しに気づくことよりも、臨場感や現実感が観客に伝わることに意味があります。 アルフォンソ・キュアロン監督作品 「天国の口、終りの楽園。」のDVD(楽天市場) 「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」のDVD(楽天市場) 「ゼロ・グラビティ」のDVD(楽天市場) さて、本日のランキング商品ピックアップは、さんの 【送料無料】ゴムストラップサンダル カジュアル ゴム エスパ 歩きやすい 痛くない S~3L(25.5cm)【2015春夏新作】sesto/セスト デイリー総合ランキング、靴部門のトップです。おしゃれなサンダルは少なくないのですが、靴擦が大きな心配。このサンダルなら心配ありませんね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2015年06月25日 00時50分25秒
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