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「猿の惑星:聖戦記」(原題:War for the Planet of the Apes)は、2017年公開のアメリカのSF映画です。ピエール・ブールによる同名のSF小説を原作にした「猿の惑星」シリーズを新解釈でリブートした新三部作の完結編で、高度な知能を得て反乱を起こした猿たちと人類の戦いのさなか、猿のシーザーがリーダーの使命感と家族を奪われた復讐心の狭間で葛藤する姿を描いています。第90回アカデミー賞で、視覚効果賞にノミネートされた作品です。
「猿の惑星:聖戦記」のDVD(楽天市場) 監督:マット・リーヴス 脚本:マーク・ボンバック/マット・リーヴス 原作:リック・ジャッファ/アマンダ・シルヴァー(キャラクター創造) ピエール・ブール「猿の惑星」(原作小説) 出演:猿(エイプ) アンディ・サーキス(シーザー) スティーヴ・ザーン(バッド・エイプ) カリン・コノヴァル(モーリス) テリー・ノタリー(ロケット) タイ・オルソン(レッド・ドンキー) マイケル・アダムスウェイト(ルカ) トビー・ケベル(コバ) ジュディ・グリア(コーネリア) サラ・カニング(レイク) マックス・ロイド=ジョーンズ(ブルーアイズ) デヴィン・ダルトン(コーネリアス) アレクス・ポーノヴィッチ(ウインター) 人間 ウディ・ハレルソン(大佐) アミア・ミラー(ノヴァ) ガブリエル・チャバリア(プリーチャー) ほか 【あらすじ】
【レビュー・解説】 名作SF映画「猿の惑星」シリーズをリブート、戦争と家族を奪われた復讐心に突き動かされる猿のリーダーを心情を革命的に精緻に表現、西部劇とキャラクター描写の魅力を取り込みながら種の歴史を一コマを記述する聖書的な叙事詩映画シリーズの完結編です。 猿のリーダーの心情を革命的に精緻に表現する、聖書的な叙事詩映画シリーズ完結編 高まる人権意識の中、白人のカタルシスとなったオリジナル作品 オリジナルの「猿の惑星」シリーズ(1968年〜1973年)は、フランスの小説家ピエール・ブールが1963年に発表した同名のSF小説を原作にしています。ブールは第二次世界大戦時に自由フランス軍に加わり、アジアでレジスタンス活動を支援していましたが、この時に日本軍に捕らえられ捕虜になります。彼が1952年に発表し、映画「戦場にかける橋」(1957年)の原作となった同名小説は、この戦時体験に基づいていますが、猿が人間に支配されるというショッキングな設定の「猿の惑星」も、白人が有色人種に支配されるというアジアで体験した恐怖に触発されたものではないかと言われています。類を見ない設定とストーリー展開、人間社会への風刺が高く評価されており、それまでの西部劇で描かれてきたインディアンを悪者とする白人至上主義的勧善懲悪に代わって、白人の新たなカタルシスとしてシリーズ化された映画とも見られています。
知性を備えた猿の視点で種の歴史を描いた叙事詩的リブート作品 映画化の権利を持つ20世紀フォックスには、その後、様々なリメイクの企画が持ち込まれます。紆余曲折を経た後、ティム・バートン監督、マーク・ウォールバーグ主演で、猿が人間を支配しているという基本設定以外は全くストーリーが異なるリ・イマジネーション(再創造)映画、
リブート・シリーズはオリジナル第一作に匹敵する高い評価を得る 主人公の猿の内面まで踏み込んだ、革命的な感情表現 猿に支配されるという設定があまりに強烈過ぎて、オリジナル・シリーズはあまりに好きになれなかったのですが、本作のリーダーとしての使命感と家族を奪われた復讐心の狭間で葛藤する猿のシーザーの内面まで踏み込んだリアルな感情表現に、思わず惹き込まれてしまいました。人間以外の生物をリアルで精緻な感情表現で擬人化し、その内面まで踏み込んで主人公に仕立て上げ、一本の映画にしてしまうのは、もはや革命と言えます。 この革命的な作品は、主としてパフォーマンス・キャプチャーという撮影技術によって支えられています。これは、三次元空間における人間の動作に加え、表情の変化もデジタルデータとしてコンピューターに取り込む手法で、従来のモーション・キャプチャーよりもセンサーを大幅に増やし、専用のカメラで顔の表情をとらえることで、表情豊かな演技をコンピューターグラフィックスで再現するものです。さらに本作では、「キングコング」(2005年)のキングコング役、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ(2001〜2003年)、「ホビット」シリーズ(2012〜2014年)のゴラム役など、モーション・アクターとしても名高い俳優のアンディ・サーキスを主役のシーザー役に起用、迫真の演技を引き出しています。 パフォーマンス・キャプチャによる革命的な感情表現 西部劇やキャラクター描写の魅力を盛り込み、高い娯楽性を実現 高度な知能を持つ猿に人間が支配される惑星は、実は未来の地球だったというオリジナル・シーリーズの基本設定を踏まえながらも、本作では猿と人類の戦いのさなか、猿のシーザーがリーダーとしての使命感と家族を奪われた復讐心の狭間で葛藤するという、オリジナルでは描かれていないストーリーを、種の歴史を描く聖書のように叙事詩的にに描いています。復讐を果たす為に単身、馬に乗って旅立つシーザーに、
本作に影響を与えた作品 本作の制作に当り、マット・リーヴス監督は、オリジナルの「猿の惑星」シリーズに加えて、
地下道に浮かび上がる「Ape-Pocalyps Now!」という落書き 「地獄の黙示録」に映し出さされる原題「Apocalyps Now!」の落書き 揺り戻す差別主義への鎮魂歌 白人が有色人種に支配されるという恐怖に触発されたものが原作小説だとすれば、争いや裏切り、復讐、葛藤、友情、リーダーシップといった人間の世界にも猿の世界に共通することを描いているのが本作です。かつて西部劇ではインディアンが悪者で、白人至上主義的な勧善懲悪が描かれましたが、人権意識の高まりの中、オリジナル・シリーズは白人の新たなカタルシスとみなされました。そういう意味では、本作に西部劇の要素が取り込まれていることには興味深いものがあります。本作では西部劇の要素を取り込みながらも、猿と人間のどちらかが善でどちらかが悪ということではなく、各々が善と悪を内在し、両者の対立は互いの内部抗争によってもたらされています。反ポリティカル・コレクトネスや差別主義への揺り戻しの兆候が伺われる昨今ですが、本作はオリジナルの「猿の惑星」シリーズが浄化しきれない人間の心に潜む差別への鎮魂歌と言えるかもしれません。 シーザー(アンディ・サーキス) モーリス(カリン・コノヴァル) ロケット(テリー・ノタリー) ルカ(左、マイケル・アダムスウェイト) スティーヴ・ザーン(バッド・エイプ) ウディ・ハレルソン(大佐) ノヴァ(アミア・ミラー) 【撮影地(グーグルマップ)】
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Last updated
2018年06月29日 05時00分05秒
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