8.静寂
すべての処置が終わると、分娩台の上でそのまま1~2時間、出血の様子を見ることになった。その間に家族と面会させてくれるという。入院に付き添ってきた実父母と長男ルンバは、破水した直後から分娩室の外で赤ちゃんの誕生を待っていたのである。
看護師さんたちがいなくなり、一気に静かになった分娩室に、目をうるませた父と母、そしてルンバが入ってきた。 ルンバは私の姿を見つけるなり、ニコニコしながら「ママー!」とかけよってきた。 「ママ、ばんがった(がんばった)の?」 「赤ちゃん生まれたの?」 そして誇らしげに、 「ルンバくん、お兄ちゃんになったんだよ!」。 彼の頭を思わずクシャッとなで、抱き寄せた。 「うん、ルンバくん、お兄ちゃんになったね」。
ルンバはそのまま1時間くらい分娩室にいたが、私の顔を見て安心したのか、 「おうちに帰りたい」 と言い出した。どのみち私はまだ安静にしていなければならなかったので、18時ごろ、父と母に連れられて、ルンバは実家に帰ったのだった。
18時15分。看護師さんが来て、おなかを押しながら、1回目の出血チェック。1時間後にまたチェックしに来るとのこと。「喉が渇いたでしょう」とヨーグルトジュースを持ってきてくれたので、一気に飲み干した。身にしみておいしかった…。
その後は静かな分娩室で横になり、ウトウトしながら過ごした。時折、後陣痛が襲ってきた。子宮がキューッと収縮し、まさに陣痛のような感じ。間隔は不規則で、1時間に3~4回来ただろうか。経産婦は後陣痛がきついと聞いていたが、想像していたほどではなかった。むしろ、あお向けに寝ていたことで次第に腰が痛くなってきて、そちらのほうが辛かった。
19時半。看護師さんが2回目の出血チェックにやって来た。問題なしとのことで、部屋に移動することに。入院時からずっと打っていた点滴の管だけが外されたが、急変に備え、針は明日の貧血検査が終わるまで刺したままになるとのこと。
一度陣痛室に戻り、看護師さんが荷物を持ってくれて、移動した。案内された部屋は、長男ルンバ出産時に入院したのと同じ部屋だった。まるで「帰ってきた」というような懐かしさと、出産したんだなという今さらの実感に包まれながら、私は入院生活に突入したのだった。 |