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サービスってなんや?

この本しっとる?
「社会人として大切なことはみんな
ディズニーランドで教わった」

香取貴信/こう書房

ヤンキーがディズニーランドでバイトして、サービスとは、仕事とはって
ことを学んでった話やねん。柔らかい文で読みやすて、おもろいで。

最強のタイミングの良さで友達が香取さんの講演会をやるっていうから
いってきたわ。


1月16日神戸、、、これでピンと来たあなたはエライ!
そうです、あの阪神大震災の前夜です。
神戸の有志により街を元気にするため、この日を選んで
香取さんの講演会が行われました。

逆立った銀髪、派手な背広、いかつい身体、とても
堅気には見えない。これが香取さんの第一印象です。
講演の始まり方はいかにも香取さんの、香取さんで
なければ出来ないものでした。
突如流れるディズニーのジャングルクルーズの映像、
ノリノリの音楽。
香取さんはガイドになりきって参加者に挨拶をし、
ジャングルクルーズの説明を始めます。
40代以上の参加者が多い中、
やや滑りがちなジョークをものともせず
クルーズは進む進む。
ジャングルの獣や、食人族の村を切り抜け
無事冒険から生還することが出来ました。

多くのバイトで成り立っているディズニーランドキャスト、
よほど凄いマニュアルがあるのでは?という質問を香取さんは
よく受けるそうです。
しかしごく普通のマニュアルしかなく、
それは電気製品の取扱説明書のようなもので、
各機器の取り扱い方が書いてあるだけ。
トレーニングも多くて5日程度だそうです。
ただマニュアルは、新人に渡して、
「ハイ、覚えてきて」と使うのではなく、教える側が
再確認するためにあるということを強調されました。
マンツーマンで教えて、見せて、やってもらって、
アドバイスをするというスタイルだそうです。

それよりも気をつけなければならないのが
「笑顔の鮮度」だそうです。
ディズニーランドは
夢と魔法の王国、
非日常を演出し続けなければなりません。
しかし、毎日同じことを繰り返すキャストにとっては、
だんだん非日常が日常になって行きます。
そのため笑顔の鮮度が落ちていってしまうという
恐ろしい現象が!しかしそこはディズニー、
素晴らしい対応策があります。
毎日朝礼で昨日あった出来事を発表し、
全てのスタッフに知らせているそうです。

例えばこんなことがありました。
ある夫婦がレストランで、今日は息子の命日だということを
キャストに言ったそうです、それを聞いてキャストは
余っている席を子供用の椅子にそっと替えました。
この話を聴いたキャストは感動し、そういった
ゲストが今日は自分の前に現れるかもしれないと思い、
また笑顔が原点に戻せるそうです。

これを繰り返すうちにキャストには引出しがどんどん
たまって行き、自発的に
「ディズニーランドらしい」サービスが出来るようになる。
「毎日が初演」という気持ちを保ちつづける。
マニュアルには書けないけど、前スタッフが
知っている「マニュアルを超えたサービス」。
これがディズニーランドキャストの強みだそうです。


香取さんのお話は他にも、ご自身がディズニーで
働き始めた不順な動機や神戸の人の話もあったのですが、
一番印象に残ったのは夢に向かって爆走する男
「佐賀屋君」のお話でした。
彼はディズニーが大好きで大好きで大好きな
「ふけがおの少年」
だったのですが、念願かなって
ディズニーランドのスタッフになりました。

そして数年後にスプラッシュマウンテンができると
聞いて、そこのオペレーターになることを決意します。
そのために佐賀屋君は何をしたと思いますか? 
彼はバイトが終わってからディズニーランドに
お金を払って入りトムソーヤの船に乗るのです。
なぜトムソーヤかというと、船に乗っている最後の
1分半くらいだけ3階のデッキから建築途中の
スプラッシュマウンテンが見えるのです。
その1分半をカメラとビデオで収め、再び
トムソーヤ船に乗るのです。

また、ある日佐賀屋君は静岡の工場に出かけました
(もちろん自費)。
そこではスプラッシュマウンテンの模型を使って、
水力の実験がされていたのです。本来ただのバイトである
佐賀谷君は工場には入れませんが、
全身ディズニーグッズでかためた加賀谷君は
自分の情熱を工場の人に伝えあっという間に仲良くなり、
間近で実験をビデオに収めさせてもらいました。


またあるとき香取さんは佐賀谷君の家に遊びに行きました。
そこにあったのはなんと

スプラッシュマウンテンの精巧な模型。

図面もないのにどうやってこんなに正確に造れたのか?
加賀谷君は工事のおじさんと一緒にお昼御飯を食べて
仲良くなり、マウンテンの高さ、角度などの情報を
少しずつ聞き出してはメモに取り、その模型を造ったのでした。

数ヶ月後スプラッシュマウンテンのオープンが近くなり、
オペレーターの選考になりましたが満場一致で佐賀谷君に
決まったそうです。(そりゃそうだ)

それから月日は流れ、佐賀屋君は次の夢を見つけました。

「本場アメリカのスプラッシュマウンテンで働きたい!」

東京ディズニーランドはフランチャイズなので、アメリカの
ディズニーランドに転勤はありません。
おまけに佐賀屋君はバイトで、英語も話せない。
ゼロどころかマイナスからのスタートです。
佐賀谷君はまず白雪姫やシンデレラなど外国人キャストに
積極的に話しかけ英語を教えてもらいました。
そして数ヵ月後、日本に自分のようなディズニー好きがいるなら、
本場アメリカにもいるに違いない、その人と仲良く
なろうという作戦を立て
「東京ディズニーランドのグッズ」で全身を固め、
「カリフォルニアのディズニーワールド」に乗り込んだのです。
ものめずらしげに集まってきた人たちにグッズをあげ、
友達を作ろうと何度もトライし、そしてついに
「アメリカの佐賀谷君」ことスコット青年と
知り合いディズニーについて大いに語り合うことができました。

彼によると、日本のディズニーストアはアメリカの
ディズニーの系列なので、そこに入れば何とかアメリカに
来るチャンスはあるとのことでした。

帰国した佐賀谷君はディズニーストアにバイトで入ることに成功し、
さらに社員になりました。そこでアメリカへの
研修制度があることを聞きましたが、全世界から応募者が
いるため倍率は250倍。試験はもちろん英語で、彼は実家に
ある中学校の教科書をすべて6回ずつ丸写しして英語を
勉強しました。
そして数々の難関を突破してアメリカに渡り、夢をかなえたのでした。
彼のひたむきさ、行動力には香取さんも大いに影響を受けたそうです。


以上の佐賀屋君の説明が終わった後、ご本人に登場していただきました。
なんと香取さんが話している間、プロジェクターを操作していた人でした。ほんとに
「カールおじさん」
のようなふけ顔の、親しみやすい方でした。

今はディズニーランドのメンテナンスのお仕事をされているそうです。
香取さんも、佐賀屋さんも、多くの人との出逢いの中で
愉しみながら学びながらここまでやって来た、という事が
ビシビシ伝わりました。最後に二人のパフォーマンスで、
「(マクドナルドの)ストローをジャガイモに突き刺し
貫通させることができると思いますか?」という問いかけを
参加者にされました。
出来ないと思う参加者に前で実際に刺してもらったのですが、
皆さんも一度試してください。ストローの上の口を親指で押えて、
左手でしっかりジャガイモを押えて勢いよく刺してみてください。
刺さると思ってやると刺さります。


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