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2008.06.02
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カテゴリ:フランス映画

 La_pianiste_1.jpg cine2.jpg

 ウィーン国立音楽院でピアノの教授をしているエリカ。幼い頃から母親に厳しく育てられた彼女は、40歳を過ぎた今も母と二人暮らしをしていた。
ある日、エリカは演奏会の席で青年ワルターに出会う。ワルターは一目でエリカを愛し、執拗につきまとい、音楽院試験をパスして彼女の生徒になるのだった。そんな彼のピアノに特別な感情を抱くようになるエリカだったが・・・。



 青年の純粋な愛と、エリカの倒錯した愛。
妙な関係が始まり終わっていく、その精神のありようは、時に可笑しく滑稽で切なくて、絶妙なバランス感覚で過ぎていく。

カンヌ映画祭グランプリ受賞。それが頷ける、隙のない凄みのある作品でした。
ハネケ監督の巧さは、たった二本の映画を観ただけでわかります。機微をうがち、心は監督の予測どおりに動いてしまう。
人は欠点を見つけて安心するというけれど、映画に関してはどうだろう。きっと同じ。物語の展開に限りなく違和を感じない監督の映画は好きだけど、完璧すぎる監督は大好きになれない。
この『ピアニスト』は、違和や欠点というものを越えた完璧さがあるように思います。ハネケ監督によって、観る者の反応が予測され撮られているから、ラストで許される反応がごく限られてくるような、そんな感じがします。
素晴らしい。けれど、心からは楽しめない。愛すべき作品はない。そういう映画を撮る方ではないでしょうか。
こういったタイプの作品が好きな方は、きっととことん好きだと思う。

haneke_piano.jpg piano.jpg

厳しく美しく、才能あるエリカには、しかし性倒錯者であるという秘密がありました。
彼女はマゾヒスト。夜な夜な厳格な母を欺いては街を徘徊して、異常性欲を持て余しているのです。
そこに訪れる運命の出会い。ピアノの才能あるワルター青年は、一目でオールドミスのエリカに惹かれ、彼女もまた、固執するシューベルトを見事に弾きこなす彼に心奪われてゆくのでした。
純粋と倒錯。ふたつの愛。
狂おしいほどに求め合っていながらも歪んだ関係は、エリカのマゾヒズムに関する願望の告白で、脆くも無残に崩れ落ちていってしまうのでした。
純粋だった青年には未来が残されているというのに・・・。エリカにはどん底のうちの悲壮が残るばかり。


ああしていれば、とか、こうしていたならとか、ありがちな後悔では語れない、なるべくして破局していく関係が見事です。
イザベル・ユペールの熟練した熟女の演技は異彩を放ち、それに負けていないワルター役のブノワ・マジメルの存在がまた素晴らしい! 当時26歳くらいでしょうか。若くみえて、適役。しかもいい男。
困惑したり焦ったり憤ったり、エリカに振り回されながらも、彼女を虜にするだけの魅力ある青年役を、とても好演していたと思います。

父親は精神を病み、ずっと昔に亡くなって、以来母親は、異常な愛情をエリカに注いできました。常に監視の目を光らせ、そんな中で生きてきたエリカの心の歪みは、当然のことのよう。
彼女の痛めつけられたい願望は、精神の未熟さからでしょうか。
監視する母を嫌いながら、逃げ出そうとしない。ぬくぬくと守られてしか生きられず、自分を傷つけながらでないと生を謳歌できない。
性器を傷つけるシーンなど『叫びとささやき』を思い出しましたが、女性の性の悲しさを感じる場面でもあります。
中年女性への青年の一途な愛。大好きな『愛に関する短いフィルム』にもありました。滑稽でいてとびきり純粋なこの感情、もしかしたら監督たちの経験したものなのかもしれませんね。




監督・脚本  ミヒャエル・ハネケ
製作  ファイト・ハイドゥシュカ
原作  エルフリーデ・イェリネク
出演  イザベル・ユペール  ブノワ・マジメル  アニー・ジラルド
アンナ・シガレヴィッチ  スザンヌ・ロタール  ウド・ザメル

(カラー/132分/フランス=オーストリア/LA PIANISTE)







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Last updated  2008.06.03 22:57:51
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