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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:アメリカ映画
ワイオミング州ブロークバック・マウンテンの雄大な風景をバックに、2人のカウボーイの20年にわたる秘められた禁断の愛を描いた物語。 この年の映画祭を賑わせた秀作で、ヴェネチア映画祭ではグランプリに輝いています。 人間はまだまだ進化を続けているんですね、おかしな言い方だけど、そう感じました。同性同士が性別を越え、愛し合うことができるようになった時代。性同一性障害とかオカマというのじゃなく、様々な面で許し受け入れる個体になってきてるみたい。心も体も。 物語の舞台は60年代からの20年間。まだ同性愛者を受け入れる社会ではなかった頃の物語です。 観客はといえば、彼らの愛を純粋だと思い、素直にラブストーリーとしての切なさを感じてしまう。男同士の純愛をまっすぐに描いた作品は、まだあまり作られてはいないけど、そんな中で、私にとっては『蜘蛛女のキス』が一番忘れがたい大好きな作品です。 季節労働者としてブロークバック・マウンテンで出会い、いつしか友情を越えて愛し合うようになるイニス(レジャー)とジャック(ギレンホール)。二人はひと夏の出来事として別れた後も互いに忘れられず、ついにある4年後、再会を果たします。 結婚して子どももいる二人でしたが、求める想いは強く、20年に渡ってブロークバック・マウンテンの麓で逢瀬を重ねるのでした―――。 愛は続いても、二人の人生は相反していきます。農機具販売をする義父の会社でセールスマンとして働くジャックは裕福になり、余るほどの金と時間がある。一方イニスは、妻に関係がバレて離婚、地元の牧場で働き続けますが、二人の娘に養育費を払い続けて余裕がありません。 遠く離れたイニスの元へ、自由のきくジャックが通い、その関係は成り立っていましたが、年に数回逢えるだけの関係にジャックは満足できなくなり、イニスの生活の苦労も限界を迎えて、ついに二人の関係にヒビが入り始めるのですが・・・。 終わりごろの諍いのわけがよくわかります。秘密をもち続け、意識のどこかで怯えながら生きている二人の苦悩も。 いつか破局がくることや、そのきっかけも、抱く気持ちに逆らわずに自然と展開していきました。そういった面では、王道をいく作品です。 評価されたのは、20年に渡る心の描写を丁寧に描けているからに他なりません。ただ男同士の恋愛であるというのが斬新なだけで。 若くして貫禄あるジェイクと、リバー・フェニックスを髣髴とさせるヒースの繊細な演技と、美しい自然。三拍子揃った様が、何より視覚に絶大なる好印象を与えていきます。今年一月、ヒースが若くして亡くなったことも、心の何処かで儚い切なさを湧かせました。 王道をいった巧いラストに、素直に泣かされました。ジャックと父親の確執には、添え物感が拭えなかったけれど。 監督のアン・リーは先日の『推手』がデビュー作。台湾出身で、『いつか晴れた日に』『グリーン・デスティニー』『ハルク』など、作品に統一性がない人。 最新作の『ラスト、コーション』も、まさか氏の映画だとは思いもよりませんでした。劇場へ行けなかったのですごく楽しみにしている作品です。 最後にワガママをいえば、18、9歳頃であろう出会ったころの二人が、すでに貫禄あって若き日の出会いに見えなかったのが残念。老けメイクせずに20年後のシーンまで演じきるので、長い年月に及ぶ愛の壮大さが薄れてしまったようで。 それもこれも二人の存在感に味があるからゆえでしょうか。 監督 アン・リー 原作 アニー・プルー 脚本 ラリー・マクマートリー ダイアナ・オサナ 音楽 グスターボ・サンタオラヤ 出演 ヒース・レジャー ジェイク・ギレンホール ミシェル・ウィリアムズ アン・ハサウェイ (カラー/134分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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