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行きかふ人も又

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2009.04.28
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カテゴリ:日本映画

 お世話になっているアネモネさんが、先日ブログでおすすめされていた作品です。
さっそくDISCASでレンタルしてみました。
この映画、良かったです。
私的に好きな男優、トヨエツ&トオルコンビなのがツボだったし、なにより、初めて女優さんとして認識した小池栄子が、驚くほど存在感あるいい演技をしていました。


 都内の会社に勤める遠藤京子(小池)は、家族とは疎遠で友達もいない、孤独な日々を送ってきた。
ある日彼女は、無差別殺人を犯した男・坂口秋生(豊川)が、TVの生中継で逮捕される様子を偶然目にする。
その表情に自分と同じ孤独と絶望感を見いだした京子は、仕事も辞めて、坂口に関する情報を集め、弁護士の長谷川(中村)に彼への差し入れを取り次いでほしいと依頼するのだったが―――。



 「誰にも理解されない社会のはみ出し者で、損なことばかり押し付けられて、自殺でもしそうな陰気な人間に見られるの・・・」京子はそう言います。
たしかに彼女や坂口は、誰にも理解されないで、愛されないで生きてきたかもしれない。
けど、そういう人々がみんな、犯罪者になるわけではないし、結局は二人の利己に思えてしかたがなかった。
はじめは、残忍な犯罪にも、情状酌量の余地があることを描いた作品なのかと思ったけれど、違ってた。
間違いは間違い、罪は罪。理解できないものは理解できないのだ。


公判を傍聴し、塀の外から差し入れを続け、病的なまでにその存在を求め続けた京子。
少しずつ彼女の気持ちに応え始める坂口は、純粋に彼女を愛したのかもしれない。
けれど結局は再生の未来を紡ぐことはできなかった、、。

幸せな一家を惨殺した坂口の罪も、京子の犯す罪も、無意味な空しい暴力で終わってしまう。
ふたりは、終いまで、その深い孤独を癒されることなく、歪んだ愛がかなしい。


キーパーソンは、ふたりの間に立たされる弁護士の長谷川だ。
彼は京子に静かに惹かれながら、坂口にのめりこんでいく彼女を心から心配する。
徹底して黙秘を続ける坂口のことを、できる限り理解をしようと努力する。
この誠実な男は、確実に犯罪者の心の岸辺近くまで、下りていくことができた。
けれどその行く手を再び阻むのは、第二の犯罪。
残酷なまでに救いは訪れない。

犯罪者を描いた面も、犯罪者予備軍を描いた面も、倒錯した純愛を描いた面も、胸にクサリと刺さる、なにか痛みを伴う衝撃があって、良かった。
できるならもう少し、長谷川と京子との間に瑞々しいエピソードがあればよかったな。
そしたら、ラストの接吻が、もう少し意味あるものに見えたのかもしれない。
あの接吻にどんな意味があったのか、正直私にははっきりと見えてこなかったのです。
タイトルにもなった接吻の相手が、まさかの展開で、それがよかっただけに残念です。
 


●  ●  ●  ●



監督  万田邦敏
脚本  万田珠実  万田邦敏
音楽  長嶌寛幸
出演  小池栄子  豊川悦司  仲村トオル

(カラー/108分)







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Last updated  2009.04.29 00:05:33
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