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猫的日常覇天録  ~このページは「お肉学園」との共有でお送りしております~

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2006.10.12 楽天プロフィール Add to Google XML

第45話 旧友
[ にゃんこぱらだいす2 ]    

空洞。
巨大な鎖。
縛られ眠る猛獣。

「ドーベルマン・・・ダークの言ってた看守ってこいつだったのか・・・!」
「知ってるですの?」
「ああ・・・俺がまだ組織に居た頃、よく館長の隣に座ってた奴だ。館長に忠実で・・・闘犬に出場した時の姿は俺も見たんだが向かうところ敵なしって言える程強かった」
「知り合いなら警戒する必要無いんじゃないですの?」
「逆だ。何故こいつが此処に居るのかを考えりゃ・・・とても容易に進めるとは思えねえ」

当時、圧倒的な武勇を誇り絶大な信頼を得ていたあのドーベルマンが、何故誰も入らないような地底の奥底に居るのか。ダークが「看守」と呼んでいた辺り、この階段の警備を任せられているんだろう。もし戦闘にでもなれば、俺達に勝ち目があるわけもない。
確かに巨大な鎖で繋がれているが・・・恐らく、張ればこの空洞内の端から端までは移動出来るだろう。突破方法は1つ。
「こうなりゃ・・・起こさないように進むしかない」
「分かったですの・・・音を立てないで進むですの」

施設内で警備ロボットに襲われた際、無音での歩行は一度実践した。2匹には、どこか安心感があった。この猛犬を起こさずに進める、自信があった。その自惚れが、僅かな油断を生んでしまった。

「・・・?何奴だ・・・・・?ダーク殿では無いな・・・?」
ちょうど横を差し掛かった時、奴は目を覚ましてしまった。歩行時に起きる足音ではなく、地面の振動を感じ取って。
2匹は、その場に立ち止まってしまった。動じている場合ではない、急ぎ走り去れば逃げ切れる距離かもしれないが。慢心が恐怖を呼び覚まし、足を竦ませた。

「・・・この気配・・・しゃむ、なのか・・・?」
巨体を動かし、ゆっくりと起き上がるドーベルマン。
「よ、よお大将・・・ひ、久し振りだな」
思わず声が震えるしゃむ。動揺が隠せない。
「もう1匹・・・特殊な気配を出してる者が居るな」
気配・・・?しゃむの中で、何かが閃いた。
「大将・・・まさか、目が・・・」
「ああ・・・もう、何も見えない・・・」
侵入者に対して、冷静に答える猛犬。どうやら今すぐに捕って喰おうってつもりは無いようだ。

「・・・そうか、兄弟を助けにこんな所まで・・・」
「ああ。謀反ってやつだ。俺も今じゃ組織から追われる身さ」
昔話に花が咲く2匹を、かのんは不思議そうに見ていた。何かこいつら仲良いじゃないですの。恐れて損したですの。
「大将・・・その目、一体どうしたんだ・・・?」
「お前も幹部クラスだった身だ、知らないわけではあるまい・・・この組織の、裏側を」
「まさか、まさか・・・生体実験・・・!」
「ああ。あの男・・・透視の能力を持った猫の眼球をわしに移植する実験を行った。結果は・・・この様だ。失敗したと分かった途端、わしをこんな所に追いやった。復讐を恐れたんだろうと警備隊長殿は言っておったな」
「警備隊長・・・ダークか・・・」

ゆっくりと目を開く大将。その目に、光は無かった。傷口こそはっきりとは見えないが、それは明らかに犬の目ではない。

「ダーク殿だけだ・・・わしの身を案じてくれたのは・・・。側近の松井に連れられてこの先に入って以来、毎日のようにわしを訪ねてきたのさ・・・」
「・・・!そうだ、ダークは・・・この先に行ったのか?大将、ずっと此処に居たんだろ!?」
「・・・通った。声を、聞いたからな。だが・・・気をつけた方が良いぞ」
「?」
「居眠りしてるのかと呟いておった。普段ならそんな言葉をわざわざ遺したりはしないんだが・・・何か、仕掛けがあるのかも知れぬぞ」
「そうか・・・」

「あ、あのー」
ようやくかのんが会話に入ってきた。
「進んで、いいんですの?止めないですの?」
「はっはっは・・・お譲ちゃん、わしの目が見えるだろ?わしから光を奪ったのは・・・館長なのだ。確かにわしは此処を守護する役を任されているが決して連中に従っているわけではない。この目が活きていれば、わしはまだ第一線に立てるのにのお・・・他ならぬ旧友が立ち向かおうとしてるのだ、止める理由などあるまいに」
「・・・。分かったですの。全部終わったら泰造じーさまに診てもらうですの!」
「お嬢ちゃん、気持ちはありがたいが・・・わしの目は・・・」
「何を諦めてるですの!諦めたらそこで終わりですの、また見えるようになりたいならどうしようもなくなるまで諦めちゃだめですの!」
「・・・。その言葉、しかと受け止めた・・・名は、何と?」
「かのんですの。ねおんって名前のにーさまを取り返しに来た、かのんですの」
「華やかな音、か・・・いい名だ・・・無事を祈るぞ」
「任せとけですの!」
「全く、さっきまでびびり上がってた奴が何て身の返し様だ・・・まあ、それでこそお前らしいがな」
空洞に笑い声が響き渡った。少し、元気が出た。

階段を降りて行く2匹を、大将は何も見えぬ目で追った。
「これより先、友が為にわしは修羅となろう・・・無事に戻るまで、誰も通しはせぬ」
たった1匹の、決意だった。


Last updated  2006.10.13 19:27:51
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