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2007/09/30
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カテゴリ:陰陽師大好き♪

  「陰陽師 都の守り人」 Part8

(注)これから書く「陰陽師」は、夢枕獏さんの「陰陽師」や映画「陰陽師」とは、全く関係ありませんので、
ご了承下さいませ。
私の趣味の一環として書かせていただきますので、よろしくお願いしますです。

      「陰陽師 都の守り人」Part1 ←クリック
      「陰陽師 都の守り人」Part2 ←クリック
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mureturu-line1.jpg


<鈴姫の屋敷>
鈴姫の屋敷に着いた博雅は、家人に案内されて奥の間に座した。
この家人も生身の人ではない。
鵺のしもべとして働かされている、雀や雲雀(ひばり)の類だろう。

晴明は、庭の片隅に立ち、低く真言の呪を唱えている。
その姿は、誰の目にも見えない。

博雅の面前にいる鈴姫は、いつも通り清楚で愛らしく、とても鵺が取り憑いているようには見えなかった。

       (ひょっとして、晴明の勘違いなのではないか?)

そんな思いが頭をよぎる。


       「鈴姫殿。 お加減はいかがですか?」

博雅は優しく鈴姫に聞いた。

       「はい。。 昨夜は恐ろしい目に遭って、まだ気分は少し優れませぬが、
        腕の痛みは随分、引いて参りました。」

鈴姫が、小さな声で答える。

       「さようですか! それは、良かった。
        今宵は、笛の音で鈴姫殿をお慰めしたく、博雅は参ったのでございます。」

博雅は、晴明に言われた鵺のことなどすっかり忘れてしまい、嬉しそうに言った。

       「まぁ。うれしゅうございます。 
        わたくしも少しなら箏でお手合わせ出来ましょう。」

そう言うと、鈴姫は箏の前に座り直した。

博雅が葉二を取り出して口にあて、静かに奏で始める。

博雅の笛の音が夜の暗闇に吸い込まれるように、ゆるゆると染み渡って響く。
そこに、鈴姫の筝の音が奥ゆかしく重なってゆくのであった。

二人の楽の音がほどよく重なり合い、しっくりと調和した頃、晴明は博雅が用意した弓を取り出し弦を弾く。

    びぃーーん。びぃーーん。

弓の弦を指で弾きながら、晴明は呪文を唱えた。
 
       「オン・シュリマリママリ・マリシュシュリ・ソワカ・・・
        オン・シュリマリママリ・マリシュシュリ・ソワカ・・・」

博雅の笛の音と鈴姫の筝の音にかき消され、晴明の呪言も弓の鳴りも二人には聴こえない。

しばらくすると、鈴姫の息が荒くなってきた。
必死になって、何かを抑えているような様子だ。
それに伴って、箏の音も乱れて来る。

       「鈴姫殿。いかがされました?
        ご気分が優れぬのでは、ないですか?」

博雅が異変に気付いて、聞いた。

        「えぇ、少し息が乱れて参りましたわ。
         少し、奥で休ませていただきます。」

鈴姫は、博雅にそう告げると、その場を立とうとした。

その時、晴明はすかさず孔雀明王の呪に変えた。

        「オン・マユラ・キランディ・ソワカ・・・
         オン・マユラ・キランディ・ソワカ・・・」

弓の弦を弾きながら晴明は、テンポ良く呪文を唱えてゆく。

        「あぁ。。。」

鈴姫は、突然その場にくず折れた。

博雅は驚き、すぐさま鈴姫の傍に駆け寄る。
だが、晴明が結界を張ったのか、見えない壁に弾き飛ばされてしまった。

        「ず、鈴姫殿――っ!」

博雅の目の前で鈴姫が苦しそうに身悶えている。

        「ひ、博雅さま。。。た、助けて。。」

鈴姫は涙を浮かべながら、息も絶え絶えの様子で博雅に助けを求める。
博雅は、苦しむ鈴姫に触れる事も出来ず、ただ呆然とするばかり。

晴明は、より一層、弦を強く鳴らし、金剛夜叉明王の呪文も加えて鈴姫に取り憑いた鵺を苦しめる。。

        「オン・バサラ・ヤキシ・ウン・マユラ・キランディ・ソワカ・・・
         オン・バサラ・ヤキシ・ウン・マユラ・キランディ・ソワカ・・・」

弓の弦の波動が鈴姫に憑いた鵺を襲う。

        「ぬぅぅ・・・」

鈴姫の体がうずくまり、今までの鈴姫の愛らしい声とは程遠い、低い声が鈴姫の口元から漏れる。

        「おのれ~~。おのれ~~~。」

鈴姫の体がブルブルと震え、髪の毛は逆立ち、美しい手が変形し鉤爪(かぎづめ)になってゆく。
鈴姫の後方に何やら蠢くものが見える。。。。蛇だ!

博雅はようやく、目の前の鈴姫が鵺に取り憑かれていることを肌で感じた。

        「許さぬ。許さぬぞ~~。博雅――っ!」

つっと、上げた鈴姫の顔は、おぞましい猿に変貌していた。
体も丸々とした狸に変わり、怒りは博雅に向けられた。

晴明は博雅に

        (博雅、笛を吹け)

と、念を送った。

博雅は、その晴明の声を耳の奥で聴き、葉二を吹き始める。 

博雅を襲おうとしていた鈴姫が一瞬ひるんだ。

その刹那。

晴明は、

        「妖魔剥離 魂留人身(ようまはくり こんりゅうじんしん)」

と強く唱え、二本立てた指を鈴姫に向けて指した。

        「ぎゃーーっ!」

鈴姫に憑いた鵺が断末魔のような叫び声をあげ、徐々に鈴姫の身から剥がれてゆく。
しかし、相手も都に名を轟かす怪鳥の鵺だ。そう簡単に、調伏出来るものではない。

呪を唱える晴明の額にも汗が滲んできた。

その時、晴明のすぐ傍で白百合の芳香がし、見えない者からの呪文が聞こえて来た。

        「オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ・・・」

晴明は、フッと口元に笑みを浮かべ、その呪文に唱和するように呪を重ねてゆく。
博雅の笛の音もそこに重なった。

        「オン・バサラ・ヤキシ・ウン・マユラ・キランディ・ソワカ・・・」
        「オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ・・・」
        「オン・バサラ・ヤキシ・ウン・マユラ・キランディ・ソワカ・・・」
        「オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ・・・」

二人の呪が重なり合い、博雅の笛が響き渡り、鵺の苦しみが一層増した。

観念した鵺は鈴姫の体から抜け、空に向かって逃げようとした。

その時を晴明は逃さず、弓に矢を番えると、逃げる鵺に向けて放つ。

        「妖魂消滅 (ようこんしょうめつ)」

   ビョウ!

晴明の放った矢が、呪を受けて鵺に向かって真っ直ぐ飛んでゆく。

矢は鵺の心の臓に命中した。


        「ギャーーーーゥッ!」

断末魔の声を響かせながら、緑の炎を迸らせて鵺は地に落ち、息絶えた。
鵺の亡骸が見る見るうちに、灰となって消えてゆく。
その後には、孔雀の羽根が一本、残っていた。

それと同時に、白百合の香りが消え、晴明に加勢してくれた呪の声も聞こえなくなった。

        「・・・道尊。」

晴明は静かに呟き、見えない方向へ視線を向けた。


mureturu-line1.jpg

とりあえず、鵺は退治しました。
すぐ殺さず、瀕死の状態で留め置こうかと思ったのですが、鵺はさほど強くないという事にしました(笑)

鵺を弓矢を使って退治したのには、理由があります。

晴明さんが生きていた100年後の時代。
帝を夜な夜な悩ましていたのが鵺で、腕に覚えある弓の名手、源頼政が弓矢を使って鵺を退治した史実があります。
晴明さんが存命の頃にも一度、鳴弦(めいげん:邪気・魔物を祓うため、弓弦を張って鳴らす)を行って、帝の窮地を救いました。

弓弦を鳴らして邪気を祓うというのは、節分祭の「鬼やらい」の儀式で今も使われてたりします。

だから、「陰陽師2」の映画の冒頭シーンで日美子が弓矢で鬼の的を射ったのよね。

まだまだ、この後のストーリーも続きます。乞う、ご期待♪


         『陰陽師 都の守り人』 Part9へ続く  ←クリック






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最終更新日  2007/10/01 04:17:26 PM
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