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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあいと娘3人との5人暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。

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2007/11/06
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カテゴリ:生活

 タンスのひきだしを整理していたら、隅っこから、筆箱がふたつ出てきた。ああ、ここにしまってたのか。



 長女と二女、小学校時代の筆箱。
 ふたりとも小学校の6年間、ひとつの筆箱を使いつづけたので、それは相当くたびれていたし、この先使うことはないとわかっていたが、捨てることができなかった。



 こんどは、わたしの子ども時代のはなしだ。
 わたしは、帖面でもほかの文房具でも、さいごまで使いきることのできない子どもだった。
 新しい帖面を使いはじめるときには、わくわくした。
「さあ、さいごのページまで、使いきろう。字もていねいに書くぞ」
 と、誓う。
 それなのに……。
 どうしても、それができなかった。帖面の半ばで「思っていたのとちがう」状態になる。つまり、急いで書くために字が乱れたり、勉強に飽きていたずら書きをしたり。
 こうなると、もう帖面に対する興味がなくなり、そうなった帖面にひきずられて、勉強や宿題にも身が入らなくなる。
「よし、やりなおそう」
 と、ある日決心する。
 決心の裏付けとして、新しい帖面が必要になる。
「さあ、さいごのページまで、使いきろう。字もていねいに書くぞ」
 その、くり返しだった。



 果たせなかった自分の夢を、子どもに託すということは、思いもよらないことだ。子どもは子ども、わたしはわたしだ、とつねに思っている。
 そう豪語する陰で、わたしは小さな夢を子どもに託したことがある。1冊の帖面、1つの筆箱を使いつづけるというのが、それ。
 小学生になるとき、筆箱を手渡してやりながら、「ずっと使いつづけておくれね。できれば6年生まで」と、噛んで含めた。
 その結果、長女と二女は、筆箱を使いきってくれたのだった。うれしかった。
 現在、小学4年生の末の子どもも、筆箱4年めに突入。
「○ちゃんも、☆ちゃんも、しょっちゅう筆箱かえるんだよね。不思議」
 とか言っている。



 子どもたちが、たいして苦でもなさそうに、ひとつの筆箱を持ちつづけたり、1冊の帖面を使いきるのを眺めながら、わたしは、自分の子ども時代を思いだしてこそばゆくなる。
 そうして……。
 あの頃の分をとり返すためにも、モノをできるだけ長く使いたいと、思うのだ。






2



これが、なつかしい筆箱です。






Photo



末の子どもの、ただいま、活躍中の筆箱。






2_2



鉛筆は、手まわしの鉛筆けずりと「肥後守」を使って削っています。
短くなってきたら、サックを付けて……。






Photo_2



サックも付けられないほど小さくなった鉛筆は、桐の箱へ。
宝物のひとつです。







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最終更新日  2007/11/06 10:00:00 AM
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