テーマ:特撮について喋ろう♪(4361)
カテゴリ:怪獣漫画王
「ゴジラVSメカゴジラ」は93年のゴジラ映画40周年記念の第20作目、「ゴジラ」(84)を含めての平成VSシリーズ5作目の作品。
映画版は海底から回収したメカキングギドラの頭部から23世紀のテクノロジーを使い対ゴジラ用の戦闘マシンを作るという導入から始まる。 伊福部昭の音楽にのってのドッグに横たわるメカゴジラの姿が印象的な冒頭、青木一馬のGフォースへの転属、アドノア島の調査、ラドンVSゴジラ、ベビーの誕生、MG対ゴジラ最初の対決と機能停止、Gクラッシャー構想、ラドン復活、ベビーによるゴジラ誘導、最終決戦とほぼ怪獣に絡む戦いを中心に話が進む構成になっている。 今回再見したのだがテンポよく進むストーリーは飽きさせず、VSシリーズではかなり面白い作品だと思う。今さらいうこともないが伊福部昭の音楽がまた素晴らしい(ラドンのテーマが好きなのです)。 役者でいうと中尾明演じるGフォース司令官・麻生が迫力のある演技でゴジラ以上の圧倒的存在感を示しているのがこの映画の一番の見所だろう。 また佐々木隊長を中心とするGフォースもプロフェッショナルな戦闘チームとして描かれ三枝未希の戦いも一応の決着をみることになる。 坂井孝行版コミカライズの「ゴジラVSメカゴジラ」は怪獣バトルに特化した非常に漫画にしづらい題材に対し伏線を引きクライマックスを映画的な二転三転する展開に脚色しで映画とは違った面白さのある作品に仕上げている。 まず登場人物から。 主人公は青木一馬(高嶋政宏) ヒロインは生物学者の五条梓(佐野量子) Gフォース隊長佐々木(原田大二郎) Gフォース隊員のキャサリン(S・スゥィニー) 坂井漫画ではお馴染みの黒木翔特佐が自衛隊からGフォースに出向というかたちで前作から引き続き登場している。 映画の主要人物である麻生司令官、三枝未希、Gフォースの曽根崎(宮川一郎太)、大前博士(川津佑介)は登場しない。 映画と同じくメカキングギドラの頭部から始まる。 メカゴジラのお披露目パーティから原因不明の暴走、と冒頭からぐいぐい引き込む演出。「ゴジラ×メカゴジラ」における機龍の暴走はここが案外ルーツかもしれない。 転属になった青木一馬はスパルタな佐々木隊長(隻眼のたたき上げのプロの戦士。意外に人情家)にシゴかれる。青木の初任務はガルーダに搭乗しての五条梓博士のアドノア島恐竜化石調査への随行。梓は坂井版ではじゃじゃ馬の天才生物学者で大前博士不在の役割も負っている。 アドノア島では本来ガルーダも青木も登場しないのがゴジラVSラドンにガルーダが絡みガルーダでゴジラを持ち上げるというシーンが前半の見せ場として付加されていて連載時の第1回のクライマックスになっている。 重要なシーンはラドンの自己再生能力の描写だろう。(映画版では描かれていない為ラストのゴジラ復活が不自然に感じられる。) また 梓と卵の精神的結びつき、前作に通じる「怪獣と母性愛」がコミカルではあるものの丁寧に描写されている点にも注目したい。 卵が梓がいなくなると光るという現象が起こる件り。青木と梓の関係が近づくきっかけにもなっており卵にもたれる梓の姿が大ゴマで描かれ印象的である。 1回目の対ゴジラ出撃時、映画では青木はMGに乗りそびれ(て配属を変更にな)るが坂井版では海底で戦闘になる展開。 MGは光線兵器主体なので海底の戦闘は不利なのだが映画ではみられないマニピュレーターモードによる戦闘(ジャンボーグAか9か)が見せ場に。 「メカゴジラはゴジラとの格闘戦を前提に設計されています」 引っこ抜かれた左腕からのミサイル発射、ミサイルを主体にオールレンジ攻撃でダメージを与える描写が盛り上がる。しかし何かの目的に取り付かれたかのようなゴジラの前に敗退する。 青木は独房入りに。独房でで描いたスーパーメカゴジラ案が隊長の手で実行に移されることになる(映画では配車係の立場を利用してアシモフ博士に直談判してましたね)。 ゴジラが卵を目的にしていると判断した黒木は卵(映画と違いベビーは生まれていない。あくまで翼竜の卵と思われている)を囮にと考えるが当然梓は逆上して反対する。言いまかされると黒木の予想通り卵を盗みだそうとする(この辺がじゃじゃ馬たる所以)も失敗。結局、卵と一緒にコンテナに乗ることを希望するのだった・・。 梓と卵の載ったコンテナはラドンに奪われ、幕張のビルの上に。 ラドンは攻撃で傷ついた身体で卵を孵化させようとする・・。 青木の乗ったガルーダは梓を確保するもラドンをMGの攻撃から庇い墜落。そこにゴジラが出現してしまう。 ゴジラの進撃をとめられず瓦礫に沈むMG。 ガルーダはプラズマニードルでゴジラの両目を潰す。鮮血が飛び散り視力を失うゴジラ。かなり過激な描写。 ゴジラはラドンと卵に近づいてゆく。 梓はラドンと卵を救うためゴジラを殺す方法を佐々木隊長に伝える。 「本当は・・こんなゴジラを殺す方法なんて教えたくなかった・・」 ※ここからは映画の結末を書きますので注意してください※ 映画版ではベビーゴジラの生体研究からゴジラの下半身の動きをつかさどる第二の脳が確認されその破壊の方法としてGクラッシャーが発案、三枝未希の超能力が第二の脳の場所を特定する眼になる。シリーズを観てきたものなら美希の苦悩の程がご理解頂けるはずだ。 斃れたゴジラ。 瀕死のラドンがMGに撃墜されゴジラの死体に覆い被さる。 風化するラドンの身体。ゴジラの第二の脳が復活してゆく。 ゴジラの眼に光が戻る。MGは計器に異常が発生。 ゴジラ最強の赤い熱線でMGは完膚なきまでに破壊され大炎上する・・。 美希のテレパシーを受け去ってゆくゴジラとベビー。映画はここで終わる。 「やはり五条博士はアレが何だか知っていたのだ。わが自衛隊の膨大なゴジラデータをもってしても解らなかった唯一の器官、それは」 「ゴジラ第二の脳」 ※※ここからは漫画のクライマックスです。全190ページの残り70ページ。未読の方はなるべく漫画を読んでからお読みになるのをお薦めします。 MG頭部からのプラズマスパーク攻撃で第二の脳が破壊され動けなくなったゴジラ・・・。 その時卵が孵化した・・・。 卵からは四足の恐竜が・・ゴジラザウルス・・。この時点でベビーのデザインが上がってないなんてことが・・あったのだろうか。この辺は謎です。 「じゃあゴジラは・・生まれてくるこの子の所にかけつけてきていたのか・・たった一匹に減っちまった、仲間を求めて!」 「隊長、聞きましたか!ゴジラに 害意はないしそれに下半身の死んだゴジラは人類の手にあまる獣でもありません。絶滅させず保護しましょう」 「わかっとる!戦意を喪失した敵は敵ではない!」 佐々木隊長の意外な優しさが伝わるシーン。 MGはゴジラの保護に目的を切り替える・・ 「ゴジラ、もういい、それ以上動くな」 コントロールを失うMG。パネルは全て同じ文字が 「ゴジラニ死ヲ」 その瞬間「メカキングギドラの亡霊」が目覚めた。メカキングギドラのブラックボックス、「ゴジラ抹殺」のプログラム(最初の暴走が伏線)が。 全てのコントロールを受け付けずゴジラ抹殺を遂行し始めるMG。 光線を浴びせ背ビレを引き裂くMG。そして・・二匹目のゴジラ(ベビー)を認識するMG・・。 ゴジラはベビーの盾になりマトモに砲撃を受けて首が・・・千切れます。 怪獣王ゴジラここに死す・・・。このあたりの描写、容赦がない。 瀕死のラドンもまたMGの攻撃で墜落、ゴジラの死体に覆い被さる。ラドンには周囲の生き物を使って自己再生する力がある・・。 「あのラドンの同化作用・・・今度はゴジラの身体を吸収して復活をはかっていると思われます」 「その逆だ!ラドンの方が溶けている・・・ラドンが自分の命を与えている・・。ベビーを守るために」 映画でもこれ位の説明はあっても良かった気がする・・。 ゴジラ復活!メカゴジラは搭乗員を脱出させる。放出される佐々木とキャサリン。 「メカゴジラを侵しているメカキングギドラのプログラムは人命優先のはず。それがパイロットを降ろしたということは・・・」 「相討ち覚悟で戦う気だ!」 このあたりの最終バトルは迫力十分、追い討ちに次ぐ追い討ち。映画のあっさりした結末をおぎなってあまりある展開。しかもガルーダに乗っている青木と梓はまだ脱出できていない・・。 オールレンジ攻撃、手首を発射してゴジラを固定、頭部からのプラズマスパーク用のニードルで再び第二の脳を攻撃! その瞬間、ゴジラがニードルを叩き落とす。 「やったあ」とキャサリンが思わず言うのがいい。 ゴジラの放射熱線を避けたMGはワイヤーがそのままでビルに頭から垂直に激突。 ゴジラが後ろからメカゴジラの首をねじ切るという昭和ゴジラのリスペクトはまさに燃える展開。 首をねじ切られたMG。終わりかと思われた瞬間、ワイヤーを放出ゴジラをぐるぐる巻きに拘束。 (「GMM東京SOS」に似てるかも・・) 「ゴジラニ死ヲ」 あと30秒 「ゴジラニ死ヲ」 あと10秒 「いやーここから出して」 「もうダメだーっ」 間一髪、の脱出・・。そして・・・爆発の臨界 「ゴジラ!早く逃げて!」 「メ、メカゴジラ・・」MGの最期に涙する青木。この辺りの描写もいい。 ゴジラは・・・その爆発にも耐えて生き残る・・。ゴジラの咆哮・・。 「なんて生命力だ・・」 「あたり前よ・・・。彼には守るべき仲間ができたんだもの・・。」 ラストは海に向かい背を向けて去るゴジラとベビー・・・。 前作でストーリーそのものを変えてしまった坂井孝行は今回、大筋は追いつつまるで違う作品を生み出している。 映画版の面白さは麻生司令官の人を引きずり回すような存在感に美希の物語の終息(実際はそうならなかったが) 派手な光線の応酬である特撮の極み、GフォースMGの非情さ、ベビーゴジラの愛らしさとラドンの献身・・・。にある。 一方、そんな実際の映画の面白さと別の所で坂井版は伏線をきちんと引きたたみかける展開の面白さでこういう怪獣映画が観たいと思わせてくれる作品を作り上げている。いや本当にこの映画が観たかった・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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