テーマ:特撮について喋ろう♪(4355)
カテゴリ:怪獣漫画王
前作「ゴジラVSメカゴジラ」で終わるはずだった平成ゴジラシリーズ。アメリカ版製作の遅れで続けることになった中、何を描いたらよいのかその迷いがそのまま作品になったもの、それが94年の「ゴジラVSスペースゴジラ」である。
本作は宇宙に運ばれたゴジラ細胞が結晶生物と合体して戻ってくるというビオランテの要素にメカゴジラの後継機モゲラの登場、さらにはモスラと小美人コスモスまで登場とこれまでのシリーズの要素を大量にとりこんでいる。 しかしながら ・宇宙から来た謎の生物スペースゴジラと死の結晶フィールドの戦い ・スペースゴジラにリトルを結晶化されたゴジラの復讐戦 ・落ちこぼれのGフォース隊員新城と佐藤の物語 ・三枝未希を巡る行き過ぎた超能力プロジェクトと未希の初恋 ・ゴジラへの復讐に執着する男とその男を慕う女の物語 ・進退窮まるGフォース司令官の苦悩 ・・・・・などのストーリーが羅列されてるだけで交わることなく中途半端でどれもあまり面白くない。中心であるべき新城功二は実際主役らしい役どころを与えられておらず他のアクの強い人物に食われている。結局スペースゴジラ、ゴジラ、モゲラの福岡怪獣決戦以外には観る所がない困った作品なのである。 ハードボイルド脚本家柏原寛司の描く権藤が千夏にライターを渡すシーンが感動に結実しないのはそこを納得させるだけのドラマが構築されていないからだろう。 ただ、当時リアルタイムでみた子どもたちには異常に人気が高い作品であるのもみのがせない事実である。 坂井版のコミック版ゴジラシリーズは毎回登場人物を絞ってきたがついに今回、主人公が登場しない。 映画版の主要キャストは以下の通り 新城功二(Gフォース隊員、橋爪淳 ) 佐藤清志(Gフォース隊員、米山善吉 ) 三枝未希(G研究所サイキックセンター主任小高恵美 ) 結城晃(元自衛隊隊員、柄本明 ) 権藤千夏(G研究所生物工学教授、吉川十和子 ) 麻生孝昭(Gフォース司令官、中尾彬 ) 兵頭巌(Gフォース武器開発責任者、副司令上田耕一) 大久保晋(G対策協議会進化生物学博士、斉藤洋介 ) コスモス (地球先住民の小美人、今村恵子 、大沢さやか) このうち本作に登場するのは コスモスを除けば主要人物はふたりだけである。 これにおなじみの黒木翔が脇役として加わる。 他に「ゴジラVSビオランテ」から冒頭で廃墟をレポートしていたCCNのレポーター、スーザン・ハーン、それにスーパーX2のオペレーターをしていた女性(鈴木京香)と思しき人物などが登場している (坂井氏がいかに「ゴジラVSビオランテ」がお気に入りかはこの辺の渋いキャスティングからもわかるだろう) そして・・権藤吾郎・・・本作の重要なキーパーソンである。 探査機は結晶化した死の星とその原因たるゴジラらしき生物の映像を地球に送ってくる・・。 一方Gフォース本部からは最新兵器であるモゲラが強奪される。犯人は元自衛隊員の結城晃。 モゲラを追うのはメカゴジラ二号機(前作のデザインを踏襲)しかし能力差はいかんともしがたく撃破。 しかし爆発の寸前女性パイロットがモゲラに乗り移っていたのだ。 このあとは結城とGフォースの女性パイロットが喧嘩しながらゴジラを倒すためにバース島へ向かう。しかしスペースゴジラの出現によりモゲラは制御不能に。 スペースゴジラは現れたゴジラを翻弄、リトルを結晶化するも光エネルギー確保のため福岡タワーへ移動。 結晶フィールドを張り誰も近づけない光の王国を築こうとする・・。 ゴジラは脚に巨大な結晶をうちこまれたまま福岡に上陸。 フィールドは・・もはや人間の入れる場所ではなくなった・・黒木が叫ぶ。 「ただ突き進んでいるのか同じ細胞が呼びあっているのかわからんが・・頼むゴジラ、スペースゴジラを倒してくれ」 結城はモゲラでゴジラを撃つためフィールド突入を目論むも、女性隊員により強制分離される・・。 このあたりまでの展開は映画の超能力開発シーンなどを省き結城の復讐と福岡決戦にのみ話を絞ることでスピードと緊張感のある展開でぐいぐい読者を引きずりまわす。 実は映画はここまででもう最終決戦で終局だがここまでで漫画は約半分なのである。 ここからは結城の夢による回想が始まる。 「隊長の権藤一佐はふざけた奴で気に入らなかった・・」 富士の樹海にバイオメジャーの隠したゴジラ細胞を探して入った調査隊は結城の失敗により死者まで出してしまう。 瀕死の結城を背負った権藤は4日間かかって生還を果たす 「恩ってなあ、売られるより売るに限るからなあ」と笑う権藤。 ・・権藤吾郎はその責任からか国土庁特殊災害会議Gルームへ実質的左遷となった・・。 次は大阪ビジネスセンタービルのANBを使った作戦。権藤は結城を召還し作戦に参加させる。 ANBは権藤と結城の2発が当たるも権藤はさらに2発目をゴジラの口に打ち込み 3発目を撃たんとしたその時、帰らぬ人となった・・・。 「ゴジラVSスペースゴジラ」の骨頂はここにある。権藤吾郎の背中・・。 いちども振り返らず恐怖に耐えた背中・・ 「権藤さんは安全のため部下に撤退命令を出しておいて自分はANBの次弾をセットしていた。ゴジラに背をむけたまま!トラックでも電車でもいい簡単に自分が殺せるモノが確実に自分の方へ迫ってきているときに、その音が確かにに届いているのに、自分の仕事(やるべきこと)をつづけられるか?ただの一度もふりかえらずに・・」 「おれは永遠に借りをかえせなくなった・・」 結城の行動理由は非常にわかり易い。ストレートな理由が非常に感動的だ。 ゴジラはスペースゴジラを葬る。 巨大な脚の結晶がスペースゴジラの腹を突き破る。落下した福岡タワーの尖頭が咽を貫く。 モゲラは合体・・ゴジラに最終決戦を挑む・・・。 ここまででも十分面白いのだが・・さらにこのあとがある・・。 戦いは長引きすぎていたのだ。登った朝日によりスペースゴジラが復活した・・・結晶フィールドがさらに巨大化し空へそびえる塔と化すのだった・・。 ゴジラは?そして結城は復讐をはたせるのか? 「ゴジラVSスペースゴジラ」の映画版は何故面白くないのだろうか? 特撮に頼った作劇、中心のないエピソードの羅列、ドラマを担うことのない登場人物たち。 超能力開発や超能力少女三枝未希とGフォース隊員の恋は結局の所物語と重なることもなく結城は不完全燃焼のまま退場を余儀なくされる・・。 麻生が結城にモゲラに乗るのを強制するとか前述したライターのシーンは好きなのだがそれは映画の面白さとして結実することはなかったのである・・・。 平成ゴジラをキングギドラ以降、自分の作品として描き続けた坂井には怪獣バトルしか見せ場のなくなってゆく映画に対する不満があったはずで、大量に投げ出された未消化な題材の幾つかの中から自分に合った題材、権藤吾郎への鎮魂歌を選び出した。 「VSビオランテ」を愛する坂井氏であるが故にそのの思い入れが上手く昇華されよい方向に作品が導かれた・・・のである。 本作の回想シーンにおける権藤は非常に魅力的な人物である。樹海でみせる笑顔もその背中も。 あの背中に追いつきたい・・。それは結城の、男にとっての夢であり生きていくことそのものなのである。 ドラマに隠れてはいるがゴジラとスペースゴジラの戦いはかなり激しい。脚に刺さった巨大な水晶体をつかったゴジラの逆襲は凄絶だし 結晶化し砕けたスペースゴジラの顔面が突き立ったシーンはこれこそ映画でみたかった画といえるだろう。 ただ理想の自分へと想いを馳せる男、男を思い続けながらもその背中を見守り無事を祈るしかない女・・・ そんな不器用な男と女の「想い」の物語・・・。ラスト近くのやり取りが感動させるのはそれが人の想いとして結実しているせいではないだろうか・・。 「ゴジラVSビオランテ」が好きな人、「ゴジラVSスペースゴジラ」に不満を感じた人、そして全てのゴジラファンに・・・是非とも自分の目で結末を確認していただきたい。 最後に今ひとりの・・「ゴジラVSビオランテ」の登場人物の言葉でしめくくることにしたい。 「・・・自分もあの大阪ビジネスパークの作戦に参加し権藤一佐のあの背中を見せていただいたものです。・・・自分は悲劇とは思いません。あのとき見せていただいたのは権藤一佐の死に様ではなく生き様だったと思っています・・ そして、これが結城の生き様なんです。こうしなければ、やつは生きているとは感じられない人間なのだと思います!」 ※坂井孝行版「ゴジラVSスペースゴジラ」小学館、てんとう虫コミックスA5判1994年12月発売 絶版ですが今ならamazonなどでも中古で購入可能みたいです・・・。 特報!! 「ゴジラ死す」 ゴジラ最期の日迫る!! 最強最悪のバイオ怪獣デストロイアの誕生。ジュニアの死に咆哮するゴジラ。 メルトダウンするゴジラが日本を、世界を滅ぼす! 青木が!佐々木隊長が!結城が戦う! 破滅を食い止められるのは・・・奴しかいない・・ 世界の運命は黒木翔の手に委ねられた・・・。 次回、完全オリジナルで贈る坂井孝行版「ゴジラVSデストロイア」にご期待ください!! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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