腰椎麻酔(脊椎麻酔)

腰椎麻酔とは?

<適応>
 下腹部以下の手術。とくに、代謝疾患・呼吸疾患・循環器疾患などの全身
 麻酔ではその影響が心配される場合に用いる。

<分類>
 1.高位脊椎麻酔
   麻痺の高さが乳頭部まで。上腹部手術に利用。
 2.低位脊椎麻酔
   麻痺の高さが臍付近まで。骨盤内手術・虫垂切除術に利用。
   サドルブロック:麻痺領域が仙髄神経まで。会陰部の手術に利用。

<要点>
(1)体位
   両膝を抱くようにして脊柱(背骨)を十分に屈曲。
   介助者は患者の腹側に立ち、体位保持の介助をする。(大切)
(2)穿刺部位
   第2腰椎以下で行う。(脊髄の先端が第1腰椎の下端で終わる事が多く
   脊髄を損傷する恐れが少ないため。)
(3)麻痺の広がり方
   麻酔薬の比重と体位に関係。髄液の比重は1.004~1.008である。
   高比重液は低い方へ、低比重液は高い方へ移行する。
   脳に麻酔薬が移行するのを予防する事が大切。
    高比重液(1.011以上)→頭部を高く
    低比重液(1.003以下)→頭部を低く
    等比重液→髄液と比重がほぼ等しい
(4)麻痺の順序
   交感神経線維→知覚線維(痛覚・温覚・触覚)→運動線維
   痛覚が無くても触った感じが残るのは触覚線維が痛覚線維より太いため
(5)麻痺の固定
   10~15分で神経線維に吸着し、効果が固定する。

<禁忌>
 1.中枢神経系の腫瘍や炎症のある場合
 2.高度の冠動脈疾患(高血圧・心不全・動脈硬化症など)
 3.危篤なショック・敗血症・高度の脱水・貧血・高血圧・低血圧
 4.出血傾向のある場合
 5.奇形・肥満・幼児(協力が得られない)・高齢者などで穿刺困難な場合
*1~3は絶対禁忌

<利点>
 1.十分な無痛と筋弛緩がえられる
 2.産科で用いても胎児に影響なし
 3.手技が簡単
 4.器具が殆ど不要

<欠点>
 1.麻酔効果時間の制限(最高2時間程度)
 2.血圧降下・呼吸抑制・吐き気・嘔吐・術後の頭痛などが生じる事あり
 3.胸部の手術に利用できない
 4.患者は意識のある状態である(ある意味では利点ともなる)

*合併症
1.血圧降下→交感神経の遮断、骨格筋の弛緩などによって血液が末梢に停滞  
   ↓   し、静脈還流の減少と末梢血管抵抗の減少のため起こる。
  処置→点滴の確保・昇圧薬の投与・酸素吸入・頭部を低く(麻痺固定後)
2.吐き気・嘔吐→低血圧・呼吸抑制による中枢性の低酸素症・腸管の牽引
    ↓     (引っ張る事)などのため起こる。
   処置→血圧下降に準じて行う。
3.ショック→著明な低血圧・呼吸停止・意識消失(麻痺領域が非常に高位に
    ↓   なりすぎた時に起こる)
   処置→強心薬・血管収縮薬の投与・人工呼吸

<術後障害>
 1.頭痛
   2~3日から10日ぐらい続く。起きると痛み、寝ると軽快する。
   原因としては髄液圧の低下
 2.髄膜刺激症状・髄膜炎(ともにまれ)
 3.尿閉(数日で軽快)
 4.馬尾症候群
   膀胱・直腸の失禁・下肢の運動障害・会陰部・下肢の知覚障害など。
   自然に軽快

    


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