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水彩画紀行  スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

水彩画紀行 スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

テニストーナメント参戦記

カスピ海からの海風が吹き付けるバクーの街に、

コーカサス地方らしい花にあふれた春が突然やってきた。

ポプラの綿毛が一面に街を飛び交い始める頃

ライラックの花が公園にも、石造りの家並の中庭にも

近道して帰る広場の、サッカーしている

子供たちの遊び場にも咲き乱れている。

美しい小さな赤紫の花が枝ぎっしりと覆う花木を、はじめ、花ずおうと思った。

しかし、これがあのシャンソンで昔聴いたあの「リラの花咲く頃」の

懐かしい名前。ライラックの花だった。

テニストーナメントの帰り、タクシーを停めて写真を撮っていると、

ハンサムな鼻高の若い運転手君が一枝折ってくれた。


      さりげなくリラの花とり髪に刺し  星野立子


東洋の異人が自分の国の花を愛でてくれるのが

とてもうれしかったよう。さかんに話しかけてくる。


さて、そのテニスの上位トーナメント戦はかくのとおり。

このトーナメント SOCAR CUPは、アゼルに来ている外国石油資本の

エグジェクティブクラスが主催していると思っていたら、

カズと言う愛称でみんなに呼ばれている日本の方の

個人的尽力による業績で、日本の石油公団関係の

川本さんと言う人が、ほとんど一人で企画立案して

ここまで大きくしたそう。

参加したアゼルと海外の石油関係者は総勢100人。

これだけの人脈を日本の外務省が作り上げるには

そうとうな努力と出費が必要だろうと思った。

さて第一試合は、最初から秘策のグルジアワインを

一杯飲んだので緊張はまったくなく快調。

敵方が怖気づいているという情報が入っていたので、

強気でどんどん前に出てボレーをした。

ボブさんのサーブの返球をポーチして面白いように鋭角に決まる。

巨漢のバイキングのようなボブさんは優しい紳士だった。

僕がボレーを決めると「ビューティフル!」と声をかける。

自分に有利なジャッジでも、間違っていると審判に訂正を申し入れる。

いっしょに組んでテニスをしてこんなに気持ちの良い人はいない。

さて、勝っていると、相手がよく見える。

ロブが苦手のように見えたので、前衛の後ろにロブを上げると

やはり、甘いロブが返ってくる。

ボブさんとふたりでスマッシュを楽しんで決めあう。

ボレーとスマッシュを心地よく楽しんで初戦は6-1で快勝。




さて、2回戦。相手はねちっこそうな典型的アゼル人。

調子ついたら手が付けられないタイプ。

前半は互角。ボブさんも僕もサーブが良く決まった。

しかし敵は動物的なほどアグレッシブなアゼル人。

勘が鋭い。

ボブさんが膝が痛くてあまり動けないのを見抜いて

鋭角に返球してくる。

僕がテニスエルボーで強く返球しないので、ポーチされる。

しかし、こちらもふたりとも前に出てボレーで決めあう。

センターコートだったので、アゼル人と外国勢との拍手合戦もあって

気持ちよい試合だった。

ほとんど互角。

しかし優しい決め球をふたりで続けて落とした。

これが勝負を決めた。

終わってから、多少の後悔の念。

たとえてみれば小さい頃、まだ遊びたくてしょうがないのに、

母から、もう家に帰ってきなさいと言われたような感覚。

もっとテニスしたいのに、もう今日はできない!

それでも良い試合だったよと皆が言ってくれた。

いつも練習しているBAKU テニスクラブの中では、

一番、最後まで残っていたよう。

翌日のハイヤットホテルでのパーティでは、来月帰国する

カズさんと奥さんが、会長から大きな薔薇の花束を贈られていた。

なごやかな雰囲気の中で、仲間との会話と各種ワインを堪能。

テニスのおかげでいろんな人と出会い、良いひとときをもてました。

ライラックの花の咲く頃の異国での良い思い出となりました。

 歓びを陽に踊らせてリラ匂ふ  俊介


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