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水彩画紀行  スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

水彩画紀行 スペイン巡礼路 ポルトガル 上海、蘇州   カスピ海沿岸からアンデスの国々まで

短歌 青春挽歌



長い間、しまっておいた引き出しから,

折にふれてひそかに書き溜めた短歌が見つかった。

ふたりの短歌の大先輩に見ていただき、おそるおそる掲載する次第。

  情念は 夜更けの沢音秋の川 ひらひら揺れて 汝れは散りゆく
         
  狂おしき 晩夏は風の変声期 草のしとねを 過ぎゆける雲

  夢果てて落下する花 谷あいに伏せる置き火の燃える骸よ
         
  ほしいまま うばわれて秋の日溜まりに 動かぬ花の透ける葉脈

  摘み散らす花の骸は 白い尾を曳く航跡に 泡立ちて消ゆ

  泣くは誰 けだるき真昼の丘に吹く風に揺れゐる ひなげしの花

はな

 
 青春挽歌  春愁編

鈴懸けの風の通り路歩みける汝が影遠き光芒の中

   注)鈴懸け=プラタナス

妻亡くて帰る巣のなき鳥に似て遠い海市の淡き影追う

  注) 海市=蜃気楼

思い出は太陽写真の陰影に映しだされる春愁の日々

瀬の音のかき消す吐息くぐもりて灯影かすかな闇の祝祭

夢覚めて夢は遠くの花影に四肢は空しく半跏思惟なる

風薫る風にさびしさあるゆえに形状記憶の翳りある午後

裸婦


青春挽歌  コーカサス編

 アゼルバイジャンから帰る機上で、バクーの思い出を短歌に。

 夢うつつで目覚めた時、隣の麗人より教えられ、めったに見れない

 不思議な光をシベリア上空で見た。

  点滅の機灯の先に光る帯オーロラという夢の連なり

  カーテンの揺るるがごとし刻々と光の帯は変幻自在


 3カ月のコーカサス滞在の思い出は・・・

  国造りいまだ途上の貧しさに水仙を売る老婆濡れゐる

  はちきれる四肢に前髪なびかせて踊る乙女ら血はコーカサス

  悲しみは腹の子の父去りてなほ踊る乙女に翳り見る時

  旅情とは石畳の路地迷い込み途方に暮れて星仰ぐ時

  時と言う優しき水脈に身を任せ流れ行くまま風は旅人


青春挽歌  心象風景編


  何処から河岸に寄りし海月の月の燐光揺らぎつつ消ゆ

  早吹きのさくらの花はつつましく散るや散らずや黄昏のなか

  束ねてもたばねてもいまだこぼれ散る小手毬のごとたわわなる君

  おぼろ夜に桜の蕊は色づきてしめやかにかつおごそかに散る

  浅き夢目覚めて水脈(みお)をたどりゆく潮に委ねる午後の曳航

  萌える野の遠き果てまで駆けゆける白き駿馬の心象風景


     絵は 「房総の春」
房総の春




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