1167214 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

田中およよNo2の「なんだかなー」日記

田中およよNo2の「なんだかなー」日記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

プロフィール

田中およよNo2

田中およよNo2

フリーページ

カテゴリ

お気に入りブログ

いなり寿司1パック… New! 七詩さん

ご無沙汰しています heren'sさん

pressed_f… pressed_flower Liebeさん
ゆきみわぁるど♪ ゆきみちゃん♪さん

コメント新着

ミリオン@ Re:お気に入りに追加!(02/16) New! こんにちは。 嬉しいです。頑張って下さい…
ミリオン@ Re:ボヘミアンラブソディ (Bohemian Rhapsody)(02/15) こんにちは。 ドラマは面白いですね。見る…
ミリオン@ Re:プロフィール変更(期間限定?)(02/14) こんにちは。 嬉しいです。頑張って下さい…
ミリオン@ Re:「ひんやり」嬉しい(02/13) おはようございます。 チョコレートは美味…
2006年02月02日
XML
カテゴリ:ほどよく
日本の文学史でクールと呼べる作家は二人しかいなかった。
夏目漱石と、村上春樹だ。

エンターテイメントの衣をかぶって登場した、伊坂幸太郎もそこに近づきつつある。

「死神の精度」はそのくらいクールな作品だ。

この連作短編集は死神にまつわる、つまり死ぬ間際の人間を書いた、連作短編である。
死神はちっともおどろおどろしくないし、人間の姿をしている。
やや、思考がずれていたりするけれども。
さらに、死神は悩まない。
考えさえしないみたいだ。

あっさりと、「可」にて調査を終える。
つまり人間に死を招く。
死神だし、それが仕事だから仕方ないといわんばかりである。

直木賞の選考で「死について軽く扱いすぎている」という意見があったようだ。
でも、文章で死を軽く扱わなくてどうするのだと思う。
現実の世界で死は十二分に重いで。
思考をとめてしまうほどに。

だから、文学の世界で死を軽くあつかうことで、僕たちは死を客観的に眺めることができるのだ。

どうも、日本文学は深刻さと真剣さを勘違いしているフシがある。
それも、ひとつのフォルムではあるのだが、ひとつのフォルムでしかない。
フォルムだけで作品の質が判断されるのは、いかがなものか。

さてさて、「死神の精度」に話を戻す。
よくできてる作品と、好きな作品について話す。

僕が一番よくできているなと思う作品は「死神と藤田」である。

クライマックスになりそうなシーンをずっぽりと省いているところが最高にクールだ。
予感を含んだつぶやきでこの小説は終わる。

これも、めちゃくちゃ格好いい。
そして、何より真の任侠である藤田と、舎弟の阿久津のキャラがよい。

この阿久津はおろかで悩んでいるがゆえに、転がっていく話ではある。
その転がし方の完成度の高さにも感服します。

僕と5歳しか、作者の伊坂さんは違わないのだけどね。

さてさて。

次に僕が一番好きな作品は「死神対老女」である。
この短編集の最後の作品である。
これ、最後に意味があります。
単独で読んでも、じんっとはこない。

なんというか、とてもいい話にまとまっています。

老女のすっきりさがとてもいいのです。
老女はさまざまな死に打撃を受けてきた人です。
でも、死を予感しながら、ささやかなことに喜びを感じているんですね。
すごく救われるラストの風景を最後に見ます。

なんだか、死というものをクールに受け止められたら、人間はどんなときにでも喜びを感じられるのかなって、うがった見方をしてしまいます。

声高でもなければ、押し黙ってもない。
淡々とした喜び。

クールであるとは、喜怒哀楽がないことではない。
淡々と味わっていることなのだ。

なにはともあれ、「死神の精度」は読んで損のない、よく考えられた短編が集まった作品です。

是非、一読を。

※もっと、「なんだかなー」なら『目次・◎ものがたり(映画、音楽、文学、本)』まで





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2006年02月02日 23時00分25秒
コメント(10) | コメントを書く
[ほどよく] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.